妻夫木聡&井筒和幸監督が語る『黄金を抱いて翔べ』のハードボイルドな世界

2012.11.1 10:58配信
(左から)井筒和幸監督、妻夫木聡

涙を流す役がこんなに多く、そして似合う俳優はそう多くはない。「昔からなぜか多いんですよ」と照れくさそうに語る妻夫木聡。この男には「泣かせてみたい」と監督を刺激する何かがあるのだろうか? もうひとつ、あの『悪人』以降増えたというのが、鬱屈した思いや心の中に陰を抱えた男の役。そんな彼の“ノワール”作品リストに新たに名を連ねるのが最新主演作『黄金を抱いて翔べ』である。メガバンク本店の地下深くに眠る黄金の強奪に命を懸ける男たちを描いた高村薫のデビュー小説を実写化。メガホンを執ったのは妻夫木と初タッグとなる井筒和幸監督。映画の公開を前に妻夫木と井筒監督に話を聞いた。

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井筒監督が目指したのは「女子がグッと来るような」男の世界。「女の子のために“男の優しさ”なんて描いても『そんなの嘘だ』ってツッコミが入る(笑)。逆に感情が簡単に出てこない、泣いている女の子を抱きしめたりもしないハードボイルドな世界をやりたかった」と明かす。

完成した映画は、余計な説明が省かれた疾走感あふれるシーンの連続。妻夫木は「いまの時代、感じることが少なくなっていて、『当然、提供してくれるんでしょ?』という姿勢になってる。僕はこの映画を『切ない』とか『泣ける』なんて軽い言葉で売る気はないので、自分で見て体感的に受け止めてほしい」と訴える。自身が演じた幸田を含め登場する男たちを「みんな何かが欠けている。心のポロっと欠けた部分をいろいろなもので補おうと試してみるけど、全然はまらないやつら」と分析。演じる上で「後ろ姿を見るだけでそいつの背景が見えてくるような役者でなきゃいけなかった」と自らに高いハードルを課した。

先述の『悪人』では主人公と同じように実際に工事現場で汗を流したという妻夫木だが、本作でも役になりきるべく出来うる限りのことを試みた。「(撮影2か月前の)11月には幸田が幼少期を過ごした吹田市(大阪府)で過ごしたり、(劇中の)教会に居座ってみたり。地味だけどそういうことを積み重ねた。哀しい男だけどそれだけではない“何か”を抱えているので、それが植えつけられるまでそこにいようと思った」とふり返る。そのかいあって、俳優たちの間でも演出の厳しさで知られる井筒組において、監督から「何も問題ない。好きなようにやって」という全権委任の手形をもらったという。「役に入り込んで人とずっと会ってなくて、おかげで友達が減りましたよ。こんなに盛り上がらなかった年越しもなかった(苦笑)」。そうこぼす妻夫木とそれを見守る井筒監督の顔は何ともうれしそうで充実感にあふれていた。

『黄金を抱いて翔べ』

取材・文・写真:黒豆直樹

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