映画『チキンとプラム』にメッセージを寄せた葉加瀬太郎

前作『ペルセポリス』が全世界で話題を呼んだアーティスト、マルジャン・サトラピの最新作『チキンとプラム〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜』が10日(土)から日本公開される。死を決意した天才音楽家の生涯と語られなかった想いを独自の映像美で描き出した本作を、音楽家で主人公と同じバイオリニストの葉加瀬太郎はどう観たのだろうか? このほど彼のコメントが届いた。

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本作は、愛用のバイオリンが壊され、8日後に死ぬことを決めた天才音楽家ナセル・アリの回想によって綴られる数奇な人間ドラマだ。葉加瀬は主人公について「生き方、行動すべてが実にバイオリニスト的で、良くも悪くも鏡を見るようで、身につまされた」といい、「彼の音楽が愛する人への思いによって成立していたこと」に何より共感したと話す。「人を恋しく思う気持ちがないと、美しいメロディーを奏でることなんて出来ない。幸い僕は彼とは違って幸せな結婚ができましたので、妻を思い、弾くことも多いのですが(笑)、そのつど自分の記憶の引き出しから幻想としての恋を引っぱり出して演奏したり、あるいは作曲したりしています」。

劇中で死を決めた主人公ナセルはベッドの中でこれまでの人生を回想する。叱られた修行時代や、成功を収めた輝かしい黄金時代、結婚や母親の死、そして何よりも叶わなかった恋にナセルは想いをはせる。「かなわなかった恋ほど美しく鮮烈に心に焼き付いていて、僕にとっても大きな意味を持っています。忘れられない恋は誰の心にもあるはずです。でも、たまに昔の恋を思い出すのも人生にとってすごく大切なこと。それだけで普段の景色が変わって見え、明日への活力になったりします」。

本作は天才的な芸術家の半生を描いているが、そこで扱われている感情は誰もが経験したことのある普遍的なものだ。葉加瀬は「人が人を思うことは切なくて美しいし、素晴らしい芸術もそこから生まれてくるものなのだと改めて実感してもらえるはず」と観客にメッセージをおくっている。

『チキンとプラム〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜』
11月10日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー