11月19日(土)・赤坂ACTシアター。いよいよ中島みゆき 夜会VOL.17「2/2」の幕が開いた。コンサート、演劇、ミュージカルといった枠を超えた「言葉の実験劇場」として1989年からスタートした「夜会」も、回を重ねるごとに進化、深化を遂げ、今回で実に17回目。「2/2」は、1995年の「夜会 VOL.7」、1997年の「夜会 VOL.9」に続いて3回目の上演となる。自身初の長編小説としても発刊され、のちに2005年には映画化も実現した「夜会」の代表作のひとつだ。
「多重人格」をテーマに、主人公・莉花が、恋人・圭との関係を構築していく中で、自分の中のもうひとりの存在に気づき葛藤していくストーリーの骨格はそのままに、設定、構成、演出、舞台装置に至るまで大きな改訂が施されている。新曲も多数用意され、これまでの「2/2」で、すでにお馴染みの曲にも歌詞やアレンジに大きな手が加えられていた。舞台設定のひとつ、ベトナムの風景を具現化する美術は圧巻だ。キャストの植野葉子、香坂千晶、コビヤマ洋一の繊細にしてときに大胆な演技が秀逸。曲が披露され台詞のないシーンでも実に情感的な表情としぐさで物語の深みを演出することにひと役買っている。そしてなにより中島みゆき自身の存在感に圧倒された。複雑で難しい深層心理をうまく描きながら、演技と歌で唯一無二の緊張感を届けてくれた。終盤の圧倒的な歌唱は、観る者の身動きさえ許さないほどの迫力だ。音楽監督・瀬尾一三を筆頭に、小林信吾(key)、島村英二(ds)、富倉安生(b)、杉本和世(vo)など、中島みゆきのレコーディングやコンサート・ツアーでもお馴染みの、日本を代表する凄腕ミュージシャンたちが奏でるサウンドも実に贅沢だった。
これまでの上演を観た人にも、そして初めて「夜会」を体験する人にも、ぜひとも堪能してもらいたいステージだ。今後、東京は12月19日(月)まで全23公演。年を明けて2012年2月5日(日)から2月21日(火)まで大阪・イオン化粧品シアターBRAVA!に場所を移して13公演が予定されている。リリースされたばかりのニュー・アルバム『荒野より』を「夜会」観賞前に聴いておくと、より楽しめそうだ。
中島みゆき・夜会VOL.17『2/2』は、赤坂ACTシアターにて12月19日(月)まで上演中。チケットは好評発売中。