(左より)加治将樹、梅宮万紗子、曽世海司、(後ろ)矢島弘一 撮影:源 賀津己 (左より)加治将樹、梅宮万紗子、曽世海司、(後ろ)矢島弘一 撮影:源 賀津己

東京セレソンデラックスなどに出演していた俳優兼演出家の矢島弘一が、公演のたびにキャストを集めて上演している演劇ユニット。人と人との絆が今よりも強かった昭和の時代を思わせる、笑えて泣けるハートウォーミングな舞台に定評がある。第10回公演となる今回は、3年前に公開された松竹映画『引き出しの中のラブレター』の世界観をベースに“その後”のエピソードを描いた物語。主役の結生(ゆき)を演じる梅宮万紗子と元夫役の曽世海司(劇団Studio Life)、結生の弟に扮する加治将樹と、演出の矢島に意気込みを訊いた。

東京マハロのチケット情報

映画版では、不仲のまま父親を亡くしたパーソナリティーの真生(まい)が、自ら立ち上げた番組「引き出しの中のラブレター」に投稿してきた少年とやりとりをするうち、自分自身もゆっくりと傷を癒していく過程が描かれた。矢島は「もともと映画版のプロデューサーの方と知り合いで、今年の春に上演した公演が“手紙”をモチーフにした作品だったこともあり、それなら次は『引き出し~』の舞台化はどうかと言っていただけて。松竹さんの映画がとても好きなこともあって、いいタイミングで舞台化が叶いました」と作品との出合いに喜ぶ。

本作で描かれるのは、映画の3年後。同番組を担当することになった新しいパーソナリティー結生が、ラジオという温もりのある媒体を通して周囲との絆を取り戻していく。結生役にオーディションで選ばれた梅宮は「最近舞台に立たせていただくことが多いのですが、芝居を全員で培って作っていくところが、自分に合っているなと感じています」と笑顔を浮かべる。結生に関しては「強いことも言うけれど、優しいところや孤独で弱い部分もある人。ひとりの女性が見せるいろいろな感情を表現できたら」と話した。

結生の元夫でラジオ局の上司でもある竹下役の曽世は、東京マハロの魅力を「矢島さんと一緒に、時には話し合いながら作っていけるところ」と言う。「それぞれが個人として立ちながら、自然につながっていく温かい空気感が舞台にも出ているんじゃないかな」と話すと、加治が「この4人とも人見知りだから、そっちの空気感も似てるよ」と返して一同が大笑いするひとコマも。加治が演じる結生の弟・万生夫(まきお)は、ゲイでありつつ別の悩みも抱えるという役どころだが、「“ゲイ”という表面的なキャラクターに陥らないように、人間らしい万生夫像を作っていきたい」と語った。インタビュー中、初々しい梅宮を舞台では先輩の曽世と加治がフォローするなど、チームワークは早くもバッチリ。魅力的なキャスト陣が立ち上げるその本番が、今から楽しみだ。

公演は11月17日(土)から25日(日)まで東京・駅前劇場にて上演。チケットは発売中。

取材・文:佐藤さくら