万年筆のようで万年筆でなく、ボールペンのようでボールペンでなく、ローラーボール(水性ボールペン)のようでローラーボールでなく、もちろんフェルトペンでもシャープペンシルでもない。そんな全く新しい筆記具として登場したのが、パーカーの「インジェニュイティ」。普通、そんな大袈裟な、まるで四不像か鵺かスフィンクスのような形容を以て登場する製品にロクなものは無い、というのが世間の常識というものだけど、この「インジェニュイティ」、筆者は、実は凄く気に入っている。

万年筆でもボールペンでもローラーボールでもペンシルでもない、第五の筆記具と言われる秘密は、このペン先にある。

何が気に入っているって、要するに書き易いのだ、書き心地がいいのだ、書いていて心地よいのだ。筆記具を評価するのに、これ以上のものがあるだろうか。ペン先のスタイルから言えば、小さな穴が開いた樹脂製のペン先から、紙に触れるとインクが滲み出るという構造で、ぺんてるの「ボールぺんてる」とか、サクラクレパスの「ピグマ」のような、樹脂製のペン先の水性インクのペンに近い。インクは速乾性、耐水性に優れた水性インクというのも「ピグマ」に似ている。ただ、その樹脂部分は、30mほど書くと、書き手の癖に合わせて削れていって、より書き手にカスタマイズされた状態になる。

 さらに、ペン先がしなるように作られたリフィルと、それをカバーするパーツによるペン先は、まるで万年筆のように筆圧に応じて柔らかくしなり、リフィルの尻が当たる部分にはスプリングが仕込まれていて、強過ぎる筆圧を吸収してくれる。つまり、筆圧が高い人も、低い人も、同じように書けてしまうのだ。弱い方は筆圧ゼロで書けるというのも嬉しい。この筆圧ゼロで、紙にペン先が触れた瞬間から書けるというのは、何というかスピード感があって、書き出しからトップスピードで書ける感じなのだ。従来、この書き味は万年筆だけのものだったのだが、「インジェニュイティ」は、ついに万年筆以外で、その感じを実現している。

この、紙にペン先が当たった瞬間から書けるというのは、結構重要で、これに慣れると、まず書き始めに力を入れてペン先を滑らせる必要があるボールペンや鉛筆がまだるっこく感じるほど。筆者が万年筆を愛用しているのは、ほとんど、この感覚のためだけと言ってよいほどで、だから、それが出来る「インジェニュイティ」が好きなのは当たり前だ。ペン先を寝せても立てても、同じようにインクがスムーズに出てくるのも嬉しい。万年筆に比べて、圧倒的に気軽に書けるのだ。

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