アップルのスマートフォン「iPhone 5」は、9月21日の発売から1か月以上がたったつい最近まで、予約しなければ買えない品薄の状態が続いていた。発売2週目以降、販売台数は発売直後の半分程度にとどまっていたが、10月下旬頃から再び伸びはじめ、予約者の手にどんどん行き渡っていったようだ。

●「iPhone 5」が6位まで独占! 売れ筋はソフトバンク、auとも32GBに

まずは、キャリア・容量ごとに別機種としてカウントした機種別のランキングからみていこう。量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、SIMフリー端末を含む携帯電話全体の2012年10月の販売台数1位は、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」の32GBモデルだった。7月から9月まで、3か月連続1位だった「GALAXY S III SC-06D」は7位にダウン。代わって、1位、2位、5位にソフトバンクモバイルの「iPhone 5」、3位、4位、6位にauの「iPhone 5」が入った。

キャリアごとに容量を合算すると、トップ5は、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」(20.8%)、auの「iPhone 5」(16.2%)、だいぶ離れてソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」(4.3%)、auの「iPhone 4S」(3.5%)、ドコモの「GALAXY S III SC-06D」(3.2%)だった。2キャリア販売分を合算した「iPhone 5」全体の販売台数シェアは、9月の18.0%のおよそ2倍の37.0%。スマートフォンに限ると47.0%に達し、前機種「iPhone 4S」を含めると、10月に売れたスマートフォンのほぼ2台に1台がiPhoneだった。

発売直後の9月第3週(2012年9月17~23日)の「iPhone 5」全体の販売台数を1として、週ごとの販売台数指数の動きをみると、発売2週目以降、いったんは0.5~0.6まで下がったものの、10月第4週(10月22~28日)は0.90、10月第5週(10月29日~11月4日)は1.07、翌11月第1週(11月5~11日)は1.02と、発売直後と同水準まで盛り返した。同じiOSを搭載した「第5世代iPod touch」や「iPad mini」のWi-Fiモデルなどの発売とともに、たまっていた予約分が一気に入荷したと推測される。iPadとiPhoneの間を埋める中間サイズとして、新たに発表された「iPad mini」との相乗効果もあるかもしれない。

●auとソフトバンクモバイルはiPhoneが5割以上

続いて、主要3キャリア、ドコモ・au・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、iPhone 5/4Sについては、最初から容量を合算して1機種としてカウントしている。

ドコモは、LTEサービス「Xi」に対応した6月発売の夏モデル「GALAXY S III SC-06D」がトップ。シェアは発売以来もっとも低いが、これで5か月連続1位だ。2位には、秋モデルの「AQUOS PHONE si SH-01E」も入った。auとソフトバンクモバイルは、ともに「iPhone 5」がダントツのトップ。「iPhone 5」と「iPhone 4S」を合算すると、iPhoneの比率は、Android搭載スマートフォンにも力を入れるauでも60.6%、ソフトバンクモバイルに至っては75.3%と、非常に高い。

「iPhone 5」が大量に売れた結果、2012年10月は、携帯電話の事業者別契約数では三番手のソフトバンクモバイルが、35.4%を占め、スマートフォンのキャリア別販売台数シェア1位を獲得した。2位には、auがわずか0.9ポイント差で続いた。iPhoneを取り扱う2キャリアがほぼ同率1位で並んだといっていいだろう。ドコモは、キャリアの勢いを示す指標として参照される純増数やMNPによる転入・転出数だけではなく、10月に限ると、スマートフォンの月間総販売台数でも負けてしまった。

従来型携帯電話の販売が不振だったこともあり、携帯電話全体の月間販売台数に占めるスマートフォンの割合は8割近い78.7%に達し、過去最高値を更新した。また、スマートフォンに限った2012年10月のOS別販売台数シェアは、「iOS」が前月比17.5ポイント増の56.9%、「Android」が同17.3ポイント減の42.8%となり、2011年11月以来、久々に「iOS」が「Android」を上回った。しかし、1年前の2010年10月には16.5%あった「iOS」と「Android」のシェアの差は、今年10月は14.1%と、やや縮まっている。

こうした10月のさまざまなイレギュラーな数値は、iPhoneの新モデル発売に伴う一時的なものか、それとも長期的なトレンドとして続くのか。今年の冬は、昨年、一昨年とは違い、iPhoneもAndroid搭載スマートフォンも取り扱うau端末の売れ行きが鍵を握りそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。