真夏竜、少年少女合唱団みずうみ『ウルトラマンレオ』(『ウルトラマンレオ』)

『ウルトラマンタロウ』で、作曲と編曲を手掛けたのが、ザ・ドリフターズの諸楽曲や山口百恵さんの『いい日旅立ち』など、昭和を代表する歌謡曲で編曲を担当した川口真さん。

作詞に阿久悠さん、作曲に川口真さんという製作体制は、続く『ウルトラマンレオ』でも継続され、『ウルトラマンタロウ』とは180度方向性が異なる緊迫感に満ち溢れたオープニング主題歌を生み出しました。

五島勉さんの著書『ノストラダムスの大予言』の大ブームや、公害による社会不安を抱えた当時の世相が見事に反映されており、その中でも勇気や優しさといった人間の美徳、そして、希望を決して忘れてはならないという真摯なメッセージが綴られた楽曲で、阿久悠さんが歌謡曲の世界で生み出した数多の名曲と共に、その作詞家としての才を強く感じることができます。

川口さんの作るサウンドも、過酷な闘いに身を投じるウルトラマンレオの覚悟と、その背景に見え隠れする悲壮感を感じられるような物悲しくも勇壮なメロディで、阿久さんの歌詞を盛り立てています。

こちらもウルトラシリーズに欠かすことのできない大名曲かと思うのですが、残念ながらこの曲は、余りにもシリアスな曲調と歌詞から視聴者からのクレームが相次ぎ、僅か1クールで使用が中断されたという悲劇的な運命を辿りました(2クール目以降は、やはり作詞、阿久悠、作曲、川口真の体制でグッと明るい曲調の『戦え! ウルトラマンレオ』へ変更)。

そうした不運に見舞われたとはいえ、この曲の本質的な素晴らしさやメッセージ性は、些かも揺るぎません。間違いなく、昭和ウルトラシリーズが生み出した名曲の1つなのです。

TALIZMAN『ウルトラマン80』(『ウルトラマン80』)

昭和ウルトラシリーズにおける名曲といえば、この『ウルトラマン80』も決して外すことができない1曲です。

ロックバンド、TALIZMANが歌うこの曲は、それまでオーケストラ主体で制作されてきた主題歌から一転して、バンドサウンドを取り入れた楽曲。ウルトラシリーズ初の本格派ロックサウンドが最大の持ち味となっているナンバーです。

また歌詞の一部に英語が使用されているなど、リリックの面でもそれまでのウルトラソングとは大きく趣が異なっており、昭和シリーズにおいて、ある意味で異色の楽曲となっています。

とはいえ、グッドメロディによるサウンドと、聴き手であり、ウルトラマンのメイン視聴者である子どもたちに対し「君」と呼び掛けながら、熱く感動的なメッセージを投げ掛けるヒロイックな歌詞世界は、特撮ソングとして正統派のカッコ良さがあり、この曲を名曲たらしめています。

近年では、ロックやメタルなど、バンドサウンドを軸にしたウルトラソングが次々に生み出されていますが、その原点とも言える1曲です。

前田達也『ウルトラマンパワード』(『ウルトラマンパワード』)

アメリカを舞台に、初代『ウルトラマン』のリメイク的な作品として制作された『ウルトラマンパワード』。

ハリウッドの造形技術によってリデザインされたウルトラ怪獣のスーツや、デザイン性の高いキャラクターなど、『ウルトラマン』の基本コンセプトを踏襲しつつも、ストーリー面や美術面で新たな世界観を日本のウルトラファンに提示してくれました。

今風に言うと米国版の「リブート作」である『ウルトラマンパワード』ですが、日本でも、ビデオ販売とテレビ放映が行われました。その際に、日本版主題歌として使用されたのが、前田達也さんが歌うこの曲です。

ミドルテンポでジックリと"聴かせる"楽曲で、ソロ歌手としては、これがデビュー曲となる前田さんの歌声も、曲調や歌詞とよく合っています。

この後、『ウルトラマンダイナ』の主題歌など、平成ウルトラシリーズや特撮ソングの楽曲を担当し、"特撮シンガー"として活躍する前田さんの出発点ともいえる楽曲です。

『ウルトラマンパワード』は、オリジナル版のビデオとレーザーディスクのリリース以降、長らくソフト化に恵まれない作品だったのですが、今年に入って遂にブルーレイBOXが発売され、ようやく多くの人の目に触れる機会を得ました。

これを機に、歴代シリーズにおける「隠れた名曲」であるこの曲にもスポットライトが当たることを願って止みません。