『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』2012 TWENTIETH CENTURY FOX FILM

『ブロークバック・マウンテン』や『ラスト、コーション』で知られる名匠アン・リー監督の最新作『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』が来年1月に日本公開される。ひとりの少年の数奇な運命を描いた本作は、リー監督初の3D作品。その完成度は、『アバター』のジェームズ・キャメロンに「これこそ3D映画のあるべき姿」と言わせてしまうほどのクオリティのようだ。

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本作は、動物園経営者を父に持つ16歳の少年パイ・パテルが船の事故に遭い、どう猛なベンガル・トラと小さな救命ボートに乗り込んで227日にもおよぶサバイバル生活を展開する様を、美しい自然の風景を交えて描き出した感動作。

本作が描こうとしているものは基本的にド派手なアクションでも、CGよって描かれた愛らしいアニメキャラクターでもない。ひとりの少年とトラ、そしてもの言わぬ大自然が対話を重ねながら、主人公の意志の強さと心揺さぶるドラマが胸をうつ感動作だ。しかし、リー監督は「この映画は3次元の映像が必要だと思いました。3Dは新しい映像芸術の形。本作は冒険を通じて希望と驚嘆を描き、精神や信念といった概念も表現しています。内容、映像、全てが壮大なのです」と説明する。

そこで製作陣は、3D映画の第一人者でもあるジェームズ・キャメロンが所有する最新の3D撮影機材を用いることを決定。ショットごとに左右の映像の視差、露出、フォーカス、そして構図を細かく調整し、近景と遠景をなめらかに結ぶことで、スクリーンの向こう側に“物語の世界”が広がっているような立体映像を作り出すことに成功した。完成した作品についてキャメロンは「本作は、“3D映画は興収が確実に見込める『アベンジャーズ』のようなヒーロー作品や、『ハリー・ポッター』のようなシリーズ作品のように、スペクタクルなビッグタイトル作品でなければならない”という概念を覆した。この映画はとても美しく想像性に溢れ、観客はその素晴らしい映像美をごく自然に体感することができる。一体どんな壮大な冒険が待ち受けているのかわからない楽しみがある。『ライフ・オブ・パイ』のような良質な3D作品は、3D映画を見ているという感覚さえも忘れてさせてくれる。これこそ3D映画のあるべき姿だ」とコメントしている。

『アバター』の登場以降、多くの映画監督、撮影監督たちが繰り返し「3D映画だと感じさせないことこそが3Dの目標」と言い続けてきた。『ライフ・オブ・パイ』が目指す映像も、単なる立体ではなく、映画の主人公パイ少年が体験した227日の漂流記を、よりリアルに観客に感じさせるためのものだそうで、感動を呼ぶ奇跡のドラマに、最新の3D映像がどのような効果をもたらしているのか気になるところだ。

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
2013年1月25日(金) TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開
※3D/2D同時上映