2012年10~12月期の秋ドラマが、早くも中盤戦を迎えている。かなり豪華なラインナップでスタートしたが、期待にそぐわなかったもの、期待以上だったもの、その出来はさまざまだ。そこで今回は、放送前に行った注目のヒロインのリサーチ結果を検証しながら、それぞれの出演作をチェックしてみた。はたして、人気女優たちは、その実力を遺憾なく発揮できているのか!?

 

■F3層から注目された山口智子


リサーチの結果、ドラマ開始前にもっとも注目されていた女優は、16年ぶりの連ドラ出演となった山口智子だった。やはり『ロングバケーション』以来となるビックネームの登場は、それだけ期待度も高かったということか。ただこれは、テレビドラマの中心的な視聴者が、かつてのF1層(20~34歳の女性)から、F2層(35~49歳の女性)へ移っていることの証ともいえる。
 

 

『ロンバケ』は、仕事も結婚もうまくいかない31歳の売れないモデル・南(山口智子)と、24歳の落ちこぼれピアニスト・瀬名(木村拓哉)との同居生活を描いたラブストーリーだったが、当時ドラマの登場人物と同世代だった人たちは、すでにF2層のまっただ中ということになる。そんな人たちの期待を一心に受けたのが、山口智子だったということだろう。
 

その山口智子が出演している『ゴーイングマイホーム』は、『誰も知らない』の是枝裕和監督が脚本と演出を全話担当するということで、作品自体も放送前から注目されていた。主演は阿部寛で、山口智子はその妻。フードスタイリストをしていて、小学4年生になる娘もいる役だ。ホームドラマではあるが、この家庭だけを中心に描いているわけではなく、阿部寛が演じる良多の母親(吉行和子)や姉(YOU)との関係、父親(夏八木勲)の故郷・長野でのエピソードも物語には大きく関わっている。

全体的には、やはり映画のようなクオリティーを保っていて、ずっと見ていたいと思わせるような仕上がりになっている。ただ、一般のテレビドラマ好きからすれば、求めているものが違うというのも事実。実際、視聴率は初回こそ13.0%だったが、その後は8.9%、8.4%、7.8%、6.5%と1ケタが続いている(ビデオリサーチ社調べ・関東地区)。
 

視聴者も『ロンバケ』のような作品を期待していたわけではないと思うが、連ドラなのでもう少し各話に起伏が欲しいとは思っているかもしれない。でも、その淡々とした日常がこのドラマの魅力でもある。小さな妖精・クーナの存在で、ファンタジー色が強くなっているが、基本的にはリアルなホームドラマだと思うので、映画とかドラマとかのジャンルにとらわれず、作品の世界にどっぷり浸かってみるのもいいんじゃないだろうか。
 

山口智子に関しては、いい意味で16年たってもやはり山口智子だった。母親っぽい雰囲気がどこまで役づくりなのかはわからない。でも、ブランクを感じさせない存在感は初回から出ていたと思う。あと、娘役の蒔田彩珠がいい。共働き夫婦の一人娘ということで、いろいろと問題を抱えていそうなのだが、そこは是枝裕和がナチュラルに撮っているので、わざとらしさがない。自然な表情としゃべり方でちゃんとドラマの世界に溶け込んでいるところがいいと思う。

しかも、はしゃいでいる時の仕草が、ちょっと若い頃の山口智子に似ている。いや、別に山口智子の小学生時代を知っているわけではないのだが、昔は飛んだり跳ねたりする役も多かったので、その頃の雰囲気にちょっと似ている気がする。とにかく、阿部寛も含めて、すごくリアルな親子の雰囲気もこのドラマの大きな見どころだ。