ワレリー・ゲルギエフ ワレリー・ゲルギエフ

ロシアの名門オペラハウス、マリインスキー劇場が、11月14日に帝国ホテル(東京都)で記者会見を開催。芸術監督ワレリー・ゲルギエフの就任25周年を記念した2012/13シーズンのプロジェクトを発表した。

「マリインスキー劇場の来日ツアー」の公演情報

1988年、35歳でマリインスキー劇場の芸術監督に就任したゲルギエフ。当時不安定な情勢下にあったロシアにおいて、一貫性あるプロジェクトで劇場の国際的評価を高めてきた。「いまのオーケストラのメンバーは、私が育てきたたといっても過言ではないでしょう。彼らは、私が目指す“音”に最も近づくことができるのです」と成長を振り返る。若いアーティストの発掘にも尽力してきた彼は、歌手ではアンナ・ネトレプコ、オルガ・ボロディナ、ダンサーではウリヤーナ・ロパートキナ、ディアナ・ヴィシニョーワなどのスターを送り出してきた。

ゲルギエフ就任25周年記念のプロジェクトの目玉は3つ。来年5月に落成予定の新劇場、ワーグナー『指環』シリーズの録音、バレエ『くるみ割人形』3D映画版の制作だ。新劇場のマリインスキーIIは、現存するオペラハウス、コンサートホールに加え、3つ目の拠点となるが、その建設は“未来への投資”だという。「劇場には教育的機能も大事。より多くの子どもや学生に我々の舞台に触れてもらいたい」とゲルギエフは抱負を述べる。

2009年に立ち上げた自主レーベルで録音される『指環』シリーズ。ワーグナーの大作の録音は、多くの労力と資金を要すため、近年は実施自体も稀なだけに、ゲルギエフも意欲満点だ。「すでに『ラインの黄金』『ワルキューレ』は録音済み。ヨナス・カウフマン、ルネ・パーペらスター歌手が揃っています!またショスタコーヴィチの交響曲全曲録音も来年に完結予定。11月リリースの交響曲第7番「レニングラード」では、非常に生々しい演奏をお聴きいただけるでしょう」と自信をのぞかせる。

バレエ『くるみ割人形』3D映画版の制作は、同劇場での初演120年を記念したもの。全米約500の映画館で公開予定。制作にあたっては『アバター』のジェームズ・キャメロン監督にも意見を聞いたという。日本での公開は未定だが、今後DVDがリリース予定。「これからは最新テクノロジーを駆使する劇場として、世界のリーダーを目指します」とゲルギエフの意気込みも高い。

同劇場を率いて度々来日ツアーを実施してきたゲルギエフ。いまや世界で最も多忙なカリスマ指揮者だが、今年2月には「少しでも(震災後の)日本の力になりたい」と、チャリティ公演のために来日。「日本の皆さんへの愛情はいつも胸に抱いています。こんなに素晴らしい聴衆は世界を見回してもいないでしょう。これからもクラシック音楽を支え、そして子どもたちの音楽への愛情を育てていってください」と日本のファンに向けたメッセージで締めくくった。

マリインスキー劇場の来日ツアーのオーケストラ公演は、11月18日(日)の所沢公演まで、バレエ公演は12月2日(日)まで東京、愛知、兵庫で開催。チケットは発売中。