東口、西口の両方に大型家電量販店が並ぶ池袋駅

東京・新宿に次ぐ国内2位の家電量販市場を抱える東京・池袋。3年ほど前から市場規模が拡大し、現段階で1500億円程度の規模をもつといわれる。池袋が本拠地のビックカメラが複数の専門店を、またヤマダ電機が日本屈指の大型店を構え、ラオックスは百貨店内に出店している。東京のほか、埼玉や神奈川と一本でつながる池袋駅を中心に、百貨店や飲食店が建ち並び、学生や会社員、高齢者、ファミリーなど、さまざまな客層を迎え入れている街だ。(取材・文/佐相彰彦)

<街の全体像 >

●一日中楽しめる街

池袋駅には、JRの山手線と埼京線、湘南新宿ライン、東京地下鉄(東京メトロ)の丸ノ内線と有楽町線、副都心線、西武鉄道の西武池袋線や東武鉄道の東武東上線が乗り入れ、東京だけでなく、埼玉や神奈川の郊外地域へと鉄道でつながっている。2011年の1日平均乗降客が周辺の駅を含めて200万人を超える日本屈指のターミナル駅だ。

東口に西武百貨店の池袋本店と池袋パルコ、西口に東武百貨店池袋店とルミネ池袋という大型商業施設が駅と直結している。また、東口にはサンシャインシティ、西口には東京芸術劇場という集客施設が控えており、東口・西口とも駅前の繁華街には多くの飲食店、オフィスビルが建ち並ぶ。駅周辺に大学や高校が多いのも、街の特徴だ。鉄道の利便性が高く、多くの昼間人口を抱えることから、平日は会社員や学生、主婦、休日はファミリーで賑わいをみせる。とくにファミリーは、さまざまな施設で一日を楽しむために池袋を訪れているようだ。

家電量販店では、ビックカメラが池袋を“第二の創業地”と位置づけ、東口に5店舗、西口に1店舗の計6店舗を構える。群馬県高崎市で創業した同社は、1978年に池袋に進出。80年に開店した池袋店はその後池袋北口店と店名を変え、現在は池袋西口店になっている。82年には池袋東口店(現ビックカメラアウトレット)を出店、92年には、6月に池袋東口駅前店(現池袋東口カメラ館)、9月に池袋本店が立て続けにオープンした。その後、パソコン販売部門を分離し、パソコンや周辺機器に特化した販売会社の設立で、パソコン専門店が誕生。今は池袋本店パソコン館に形を変えている。10年12月には、カメラ撮影を趣味とする“カメラ女子”をメインターゲットにした写真専門館のBIC PHOTOをオープンしている。

●日本総本店でヤマダが本格参入

池袋は、駅付近の土地に空きが出ないことで知られる街だ。出店すれば販売が伸びるのはわかっているのだが、量販店各社にそのチャンスはなかなか訪れない。そんな数少ないチャンスをものにしたのが、ヤマダ電機だ。

09年10月、三越百貨店池袋店の跡地にオープンしたLABI日本総本店池袋は、売り場面積約2万3000m2と国内最大級の規模を誇る店舗。ヤマダ電機は、07年にLABI池袋(現LABI1池袋モバイルドリーム館)を出店していたが、この日本総本店池袋のオープンで、規模としてもビックカメラと十分に渡り合える体制が整ったといえる。

大手2社との競争を避けて、百貨店のワンフロアに進出したのがラオックスだ。11年8月、東武百貨店中央館6階に池袋東武店を出店した。顧客の声に応えて利便性を向上させたい百貨店と、池袋に店舗をもちたいというラオックスの思惑が一致した。

これまでみてきたように、池袋の家電量販店はビックカメラの6店舗、ヤマダ電機が2店舗、ラオックスが1店舗と、都心の他地域に比べて店舗の数は決して多くない。しかし、それでも国内第2位の市場として位置づけられているのは、各社が地域特性に合わせて大規模な基幹店や性格のはっきりしたユニークな店舗を構え、売り上げを伸ばしているから。各店とも、とくに東武東上線や西武池袋線、埼京線沿線でつながる埼玉県の顧客をリピーターとして確保しているようだ。また、ヤマダ電機のLABI日本総本店池袋の出店効果は大きく、それまで1000億円に足りなかった市場規模が、オープンによって1500億円規模にまで拡大したともいわれている。

●郊外店に負けない工夫 団塊世代の囲い込みがカギ

――クロス 得平司代表取締役

典型的なターミナル立地の家電の街、池袋の最大のライバルは、顧客が住んでいる地元にある郊外型店舗だ。家電量販店コンサルタント、クロスの得平司代表取締役によれば、「とくに東武東上線や西武池袋線、埼京線の沿線にある埼玉県の郊外店は、大きなライバルだ。池袋での価格や品揃えに満足しなければ、顧客は住まいに近く、便利な郊外店に行くだろう」と分析している。

顧客が池袋を訪れるのは、ビックカメラとヤマダ電機という大手家電量販店のライバル同士が、近接した場所に旗艦店を構えているからだ。両社の店舗を回って、自分に適した商品が揃っている店舗、同じ商品なら価格が安い店舗で購入する。これが池袋の家電量販市場を支えているのだ。逆に、「もし、住んでいる地域にある程度品揃えが充実し、価格もそこそこの店舗があれば、顧客は地元の店舗を選ぶようになる」と得平代表取締役は指摘する。

これは池袋の家電量販店に限ったことではないが、「通販サイトもライバルといえるだろう。通販よりも安い価格、もしくは店員がお客様の話を聞いて、本当に適した商品を提案してくれることがリアル店舗の魅力」と説明する。

また、「池袋周辺の住宅地には、団塊世代(63~65歳)が多くなっている。これまでベッドタウンに住んでいたが、定年退職後、子どもが巣立って、生活しやすい池袋周辺に住むようになっている」という。「この世代は、自分に合った商品を購入する際、価格を気にしない。この層をリピーターとして確保するための品揃えや接客が決め手となる」としている。

→東京・池袋(2)に続く(2012年11月26日掲載)

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年11月12日付 vol.1456より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは

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