『藁の楯 わらのたて』撮影シーン

『愛と誠』『悪の教典』といった問題作を次々に発表する三池崇史監督と大沢たかお、松嶋菜々子が初めてタッグを組み、藤原竜也が『SABU〜さぶ〜』以来10年ぶりに三池組に帰還した話題のアクション・サスペンス『藁の楯 わらのたて』の撮影現場が遂に解禁になった。

その他の画像

本作は漫画家、監督でもある木内一裕の小説を原作に、少女殺しの凶悪犯・清丸(藤原)を福岡から東京の警視庁まで護送するSPの銘苅(大沢)と白岩(松嶋)の活躍と葛藤を描いた物語。孫娘を清丸に惨殺された資産家・蜷川(山崎努)が「この男を殺してください。御礼として10億円お支払いします」という新聞広告を出すことから、陸路を移動する彼らに全国1億2000万人の殺意が向けられるという設定に注目が集まっている。

9月6日に三重県の四日市港で公開されたのは、清丸を狙った大型トレーラーの激突を辛くも逃れた警護対象車内のシーン。銘苅と白石がネットで移送の情報が漏れていることに気づくくだりで、車内は張りつめた空気に。しかも大沢、松嶋、藤原のほかに刑事役の岸谷五朗や伊武雅刀、スタッフも乗り込んでいるため、とにかく暑い。だが、俳優陣のリアルな汗が一瞬たりとも気が抜けないギリギリの状況により説得力を加えていた。

「小説は“エンタテイメントとはこういうものだ”という木内さんの想いに満ちている」と三池監督。それを視覚化するためにリアリティを追及し、名古屋市内の道路を封鎖して劇用のパトカーや警護対象車などを激走させたり、台湾新幹線を使った列車内でのアクションや、愛知県庁舎を警視庁に見立てて約800人のエキストラを導入したクライマックスなど大掛かりな撮影も敢行したという。「ハリウッド映画のように始まり、最後はSPを職業としている人間のそれまで抑えていた感情がドッと出せればいいなと思っています」。

大沢は「SPは決められた形や規制が多い。清丸と対峙したときに心の中はすごく揺れるけど、表面的には揺れちゃいけないので、毎日そこのところで戦っています」とコメント。本作に自ら髪を切って臨んだ松嶋も「SPという役自体が挑戦でした」と真剣な表情を見せる。「真っ先に手が出せる状況なのに、SPだからこらえなければいけない。その代わり、銘苅さんが要所要所でいいセリフを言ってくれる。『殺さない程度になら殴っていいってわけじゃないんだ』というのが、今日のいちばん好きなセリフです(笑)」。それに対して藤原は「清丸のセリフと行間、その世界観を監督のイメージと合わせて作り上げていくことだけに集中しています」と多くを語らず、逆にそれが原作以上に凶悪なモンスターを彼がどう体現させたのか? という興味を増幅させる。果たして、この濃密なコラボがどんな未知の化学反応を見せるのか? 来春の公開がいまから楽しみだ。

『藁の楯 わらのたて』

※山崎努の「崎」の右上は「立」になります。

取材・文:イソガイ マサト