池袋駅周辺にあるビックカメラ6店舗のフロア構成

東京・池袋の家電量販店は、平日よりも休日のほうが来店者が多く、休日の売り上げがカギを握る。とくに大型店は「一日中いても飽きない店舗」を売りにしており、池袋に店舗を構えるビックカメラ、ヤマダ電機や、“一日中いても飽きない”百貨店に入るラオックスは、地域特性や来店者の属性に合わせて体験コーナーや品揃えの充実を図っている。(取材・文/佐相彰彦)

<店舗>

●専門店の集合体で演出 街を舞台にして来店を促す

池袋を本拠地とするビックカメラは、池袋駅東口周辺に5店舗、西口周辺に1店舗、合わせて6店舗を構えており、圧倒的な店舗数を誇っている。この店舗数を生かして、ビックカメラが取り組んでいるのは、店舗に専門性をもたせること。「専門店の集合体」として、池袋という街を舞台にして集客を図っている。

各店舗には、それぞれコンセプトがある。池袋本店は白物家電を中心に揃え、ファミリーをターゲットに据える。本店パソコン館は、パソコンと周辺機器に特化して会社員と学生が対象だ。白物家電/デジタル機器のアウトレット品と中古パソコンを販売するアウトレット池袋東口店は、学生を中心に、ファミリー、会社員と幅広い層が対象だ。池袋東カメラ館はカメラと周辺機器に特化して、写真が趣味の中高年齢層とプロカメラマンがターゲット。BIC PHOTOは、お洒落なカメラアクセサリなど、雑貨を揃えることで、カメラが趣味の“カメラ女子”を狙う。西口唯一の店舗である池袋西口店は、白物家電とパソコンを扱う総合店という位置づけで、学生や会社員をお客様に想定する。

東口に店舗を集めたのは、サンシャイン60などの大型商業施設があって、休日に多くの来店客が期待でき、複数店舗で幅広い層を獲得するためだ。さらに西口にも店舗を構えて、平日の大学・高校生やオフィスビルのお客様を狙っている。

ヤマダ電機は、LABI1日本総本店池袋が三越百貨店池袋店の跡地に建ったこともあって、三越の常連客だった主婦・高齢者層の来店が多い。また、ベビーカーの乳児を連れたファミリーが来店することから、ゆっくりと店内を回ってもらえるように通路を広くしている。また、出入口のある1階には、スマートフォンやスマートフォンアクセサリ、デジタルカメラなど、注目商品を豊富に並べている。

ラオックスは、東武百貨店の中に入っていることから、理美容品などを中心に女性向けの商品を揃えている。

●【売り場/コーナー】

日本屈指のパソコン売り場 レストラン街が来店者増に寄与

「一日中楽しめる街」というコンセプトをもつ池袋に合わせて、ヤマダ電機とビックカメラは、それぞれの売り場やコーナーで、一日いても飽きないように来店者を楽しませることに力を注いでいる。

ヤマダ電機のLABI1日本総本店池袋は、広い売り場面積を生かして、通路を広くとりながら、壁一面に多くの商品を陳列している。欲しい商品が必ず見つかる品揃えを実現しているのだ。また、実際に体験できる理美容品コーナーや、主要メーカーの商品を視聴できる薄型テレビコーナーなど、各フロアで主要商品のデモコーナーを設置。玩具フロアでも子どもが実際にオモチャで楽しめるようにしているほか、乳幼児向けの遊具施設「遊キッズ愛ランド」を設けている。

さらに来店者の満足度を高めているのが、和洋中合わせて九つの飲食店がテナント出店するレストラン街だ。渡辺宏紀店長は、「当店は、一日中いても飽きないことをモットーに、ヤマダ電機の都市型と郊外型のノウハウを合体した店舗。家電やデジタル機器以外でも、とにかくお客様を楽しませることに重きを置いている」と説明する。実際、家電やデジタル機器を購入した人が、レストラン街で、ヤマダ電機のポイントカードを使って食事を楽しむ姿を本当に多く見ることができる。

ビックカメラは、本店パソコン館でパソコンの販売に力を入れているが、とくにオーダーメイドパソコンコーナーが充実している。デルやレノボ、ヒューレット・パッカード、エプソンダイレクト、ソニーなどを揃え、実機も多数展示。来店者が実際に試して、その場で購入するというサイクルができているようだ。

また、アウトレット池袋東口店では、各ジャンルの最安値を天井に吊るしてわかりやすく表示している。アウトレット品の相場を把握していないお客様の不安を払拭する工夫で、多くのお客様から評価を得ている。なかには最安値品や掘り出し物を求めて頻繁に通う常連客もいるほどだ。

さらに、BIC PHOTOは女性向けのデジタルカメラ雑貨を豊富に揃えて、学生が気軽に訪れている。ビックカメラと意識せずに来店し、会計の際にポイントカードの提示を促されてビックカメラと知るお客様もいるほど。ポイントカードの新規登録も多く、確実に新たな客層を開拓している。

●【品揃え】

ヤマダは150万点の品揃え 豊富な専門性が売りのビックカメラ

国内最大級の家電量販市場である池袋の量販店は、さまざまな客層に対応した商品を揃えることを要求される。なかでも群を抜くアイテム数を誇る店舗がLABI1日本総本店池袋で、その数は150万点に達している。デジタル機器を中心に、電車で持ち帰ることができる白物家電も充実させているほか、大型家電の品揃えにも気を配っている。つまり、「『ここに来れば何でも揃う』とお客様が認める店舗を目指している」(渡辺店長)という。

さらに、日用品や加工食品、化粧品などのフロアもあって、休日にはデジタル機器・家電を購入したお客様がポイントで日用品などを購入する「ついで買い」が多い。逆に学生や主婦などで賑わう平日は、「日用品や化粧品などで当店のファンになって、デジタル機器・家電を購入する方も多い」と、渡辺店長は総合店舗化がリピーターの確保につながっている現状を説明する。

ビックカメラのアウトレット池袋東口店は、一般製品を並べた店舗に負けない品揃えを重視している。実は、ビックカメラがアウトレット店をオープンしたことで、ビックカメラにだけでなく、メーカーにもメリットが出ているようだ。通常「型落ち」と呼ばれる旧機種は、売れなければそのまま在庫になってしまう。しかしアウトレットなら、前機種を陳列したとたん、どこの店にもなかった掘り出し物としてお客様が殺到するケースがあるという。また、展示品に関しても「展示品」と明示して新品より安く売れば、購入者が現れる。メーカーにとっては、返品として戻ってくる商品が少なくなるのだ。

池袋東口カメラ館では、デジタルカメラやカメラ周辺機器だけでなく、大型ストロボやレフ板など、プロ用の機材が充実。「カメラに関する商品なら何でも揃う」ことをコンセプトに、カメラ好きにはたまらないフィルムカメラのジャンク品や、カメラ用分解修理工具も揃えている。

→東京・池袋(3)に続く(2012年12月3日掲載)

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年11月19日付 vol.1457より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは