ミュージカル『パジャマゲーム』 ミュージカル『パジャマゲーム』

ミュージカル『パジャマゲーム』が9月25日に東京・日本青年館ホールで開幕した。1954年ブロードウェイで初演、60年以上の歴史を持つ作品だが、『タイタニック』『グランドホテル』も好評だった英国の若き演出家トム・サザーランドの手で、瑞々しくキュートなミュージカルが誕生した。主演は元宝塚星組トップスター北翔海莉。

舞台は1954年のアメリカのパジャマ工場。労働者たちは労働組合を作り、時給7セント半の賃上げを求め奮闘中。そんな中、組合の中心的存在であるベイブと、新しくやってきたイケメン工場長シドが恋に落ちる。しかし賃上げをめぐり対立する立場のふたり、惹かれあっているのに、当然その恋はすんなりといくわけもない……。登場するアイテムや設定に多少のレトロ感はあるものの、物語を貫くのは“仕事と恋”。時代も国も超えた普遍的なテーマだ。それを鬼才トムと、個性豊かな俳優たちがイキイキと描き出し、気付けば「オトナの恋って、ままならないよなぁ!」と、登場人物たちに感情移入をしてしまう。感じるのは古臭さではなく、恋にまつわる喜びと悩みという瑞々しい感情だ。

北翔は本作が宝塚退団後、初のミュージカル出演。本格的な女性役は初挑戦だが、ベイブのキャリアウーマンとしての凛々しさ、自分の恋心に戸惑う可愛らしさをナチュラルに演じている。宝塚時代から歌唱力もダンスも秀でている彼女、本作でもその魅力を存分に発揮し、今後のミュージカル界での活躍にも大きな期待を抱かせる女優デビューとなった。相手役となるシドは新納慎也。工場長という立場ゆえのお堅さだけではなく、この人らしいユーモアもあり、こちらも魅力的だ。またこのふたり、スタイルが抜群で、並んで立つだけでも華やか。息の合った掛け合いに加え見た目も良いコンビっぷり。ほか、美人秘書グラディス役の大塚千弘のコケティッシュさ、登場するたびに笑いをさらうプレッツ役の上口耕平、シドの右腕チャーリーを演じる広瀬友祐の切なさ、歌にダンスに大忙しのハインズ役・栗原英雄のコミカルさ、誰を見ても面白く、それぞれのキャラクターごとの物語が伝わってくる。

そして忘れてはならないのが、ダンスだ。オープニングからダンスの嵐! ロマンチックなものから可愛らしいもの、スタイリッシュなフォッシー・スタイルの踊りまで、多彩なダンスが次々と登場。ブロードウェイのオリジナル版は『シカゴ』『キャバレー』等を手がけた伝説の振付家ボブ・フォッシーのデビュー作としても知られ、劇中ナンバー『スチーム・ヒート』は特に有名だが、今回もこのシーンは必見。また1幕終盤のピクニックシーンは、小道具も駆使しての様々なスタイルのアクロバットダンスが飛び出す圧巻の大ダンスナンバー。舞台狭しと出演者たちが踊り、隅から隅まで楽しいので、一瞬たりともお見逃しなく。

公演は10月15日(日)まで同劇場にて、10月19日(木)から29日(日)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。チケットは発売中。