バカリズム

独特のセンスあふれる笑いで高い人気を誇る芸人・バカリズム。そんな彼が“ほぼ”監督・脚本・主演を務めた映画『バカリズム THE MOVIE』。これまでまともに鑑賞した映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』くらいという彼が、どのようにして“ほぼ”監督を務めたのか? この夏の劇場公開に続くDVD発売を機に話を聞いた。

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バラエティ番組の企画としてスタートした本作。番組では映画のメイキングの過程(と言いつつほとんど映画に関係ない小道具のカチンコ作りやライオンが吠えるオープニングロゴの製作に費やされている)を追いかけており、その後5本の短編からなるオムニバス映画が製作された。

だが映画について話を聞こうにも「映画を撮っているという感覚は全くと言っていいほどなかったです。台本作りも撮影も普段のコントを作っているときとほとんど同じだった」と語るように彼自身に“映画ならでは”の昂揚感や“待望の監督”といった感慨は全くなかったようだ。現場でメガホンを手にすることも監督用のイスに座ることもなく「信頼するスタッフさんにお任せしていました。だから“ほぼ”なんです」と笑う。

「日本映画学校卒業」という経歴からも映画を志していたと思われがちだが、これも答えはNO。「筆記試験がなくて共学だったから(笑)。でも願書を出す段階では芸人になりたいという気持ちは芽生えてました。ウンナンさんもここの出身で、すごく好きな芸人さんだったので。入っても周りにはお笑いを目指してる人なんて全然いなくて、そんな中で漫才の発表会があって、そこで上位になると事務所に入れるんですよ。オーディション受けたり養成所に通うよりもライバルが少ない中で目立った方がいいなと思って」とあっけらかんと明かす。

現在のバラエティでの活躍ぶりについてはもはや説明不要だろう。一方で俳優としての需要も急上昇中。先日放送された『世にも奇妙な物語』の一篇『来世不動産』には原作と脚本、出演の三役で参加。自身がこれまでに強くインスパイアされた存在として「藤子F不二雄先生の大人向けのSF短編」を挙げるが、まさにその影響を感じさせる奇妙な世界観を作り上げた。

今回の映画のようなコメディだけでなく、こうしたドラマの監督をするつもりは? そう尋ねると「どうでしょう? 『来世不動産』も自分の中ではコントなんです。物語となるとメッセージを伝えなきゃいけないと思うけど、自分の中では『笑わせたい』という気持ちしかないんです。ただ『バカリズム THE MOVIE』はこれからも毎年やっていきたいです」と笑顔を見せた。

『バカリズム THE MOVIE』

(C)2012「バカリズム THE MOVIE」製作委員会

取材・文・撮影:黒豆直樹