加納幸和 加納幸和

演出家・劇作家で俳優の加納幸和が主宰する劇団花組芝居が、今年創立25周年を迎えた。“ネオかぶき”と称し、歌舞伎の演目をベースに加納がオリジナリティー溢れる作品を創作。古典の枠組みを超えたユニークな発想で展開する世界観が、観客の支持を集めてきた。11月23日には25周年公演が開幕。節目の年を迎えた加納に劇団への思いを訊いた。

花組芝居のチケット情報

「25年前は小劇場がたくさんあって、その中で生き残るには、ものすごく独自なものをアピールする必要があった。たまたま僕が子供の頃から歌舞伎が好きだったこともあり、現代演劇に歌舞伎の面白い要素を取り入れて歌舞伎をもう少し身近できたらなと。それと同時に自分たちのカラーを出せたらという思いがあってはじめました」。

幼少期に触れた歌舞伎の経験が現在の活動に繋がっている。その加納が、25周年の節目に選んだ演目は『仮名手本忠臣蔵』『義経千本桜』と並び、浄瑠璃三大名作とされている『菅原伝授手習鑑』の全段通し上演だ。「歌舞伎ではここ何十年も上演されていないシーンが複数あるので、もう一度洗い直してみようと。通しで観ると本来のストーリーがどう絡んでいるか、どれだけ当時の作者たちが工夫していたかなど、いろんな発見がある」。

劇団が古典歌舞伎の全段通し上演するのは20周年時の『仮名手本忠臣蔵』以来2度目。「『仮名手本~』は(赤穂浪士たちを描いた)等身大の人間ドラマですが、『菅原~』は雷神になってしまった人の話なので、5年前より飛躍した遊び心満載の作品ができると思う」と25年の集大成に向けて自信をのぞかせた。

歌舞伎が初心者にとって敷居が高いというイメージについては、「ぼくが3歳のころ初めて歌舞伎を観て、目の前で起こっていることの何もかもに興味がわき、ハマってしまった」と幼少時の体験を明かし、「歌舞伎の知識はいりません。ぼーっと観て、分かるところだけピックアップして、“ほう、ほう、ほう”と思ってもらえればいい!ぜひ、まっさらな状態のまま、ぼくが3歳の時に受けた衝撃を体験してほしい」と気軽さをアピールしていた。

最後に加納は「多くの日本人が見落としがちな歌舞伎の面白さを取り入れる形で劇団のカラーを作り上げてきたので、花組芝居を通してみなさんに“歌舞伎って面白い”ということを再確認していただけると嬉しいです」と笑顔で語った。

公演は12月2日(日)まで東京・あうるすぽっとにて上演。チケットは発売中。