武田梨奈(ヘアメーク:寺下舞/スタイリスト:トリイクニコ)と濱正悟(ヘアメーク:佐々木麻里子/スタイリスト:徳永貴士)

 恋に仕事に悩みながらも、一歩を踏み出せずにいる人生迷子の20代のOL、春子。その前に突然、ゲームアプリのイケメンキャラ“ナポレオン”が現れた! 完璧過ぎるナポレオンにサポートされた春子の人生の行方は…? 大人気恋愛ゲームアプリ『イケメンヴァンパイア◆偉人たちと恋の誘惑(通称:イケヴァン)』を基に、完全オリジナルストーリーで映画化したラブストーリー『ナポレオンと私』が7月2日から全国公開となる。本作で、主人公の春子を演じた武田梨奈と、ナポレオン役の濱正悟が、撮影の舞台裏を語ってくれた。

-20代の頃を思い出し、人生に迷う春子に共感しました。お二人はいかがでしたか。

武田 私も春子に共感しました。「分かるな…」と思ったのは、好きな会社の先輩が「仕事をサポートしてくれる人を探している」と聞き、親友のイッチャン(伊原ゆか/綾乃彩)から「立候補しなよ」と勧められた場面。春子はそれを断って、「大丈夫」って言っちゃうんです。でも、その後、1人になったところで「ハー…」っと沈んでしまう。そんなふうに、つい強がってしまうところは、すごく共感できました。

濱 春子って、すごく人間的じゃないですか。だから共感する部分は多くて。恋愛に限らず、「うまくいかないときは、何もかもうまくいかない」というのは自分にもありますし。そういうとき、頑張ろうとは思うんだけど、踏み出す勇気を得るまで、やっぱり時間がかかる。でも、春子にはナポレオンだけではなく、イッチャンのような、支えてくれる仲間がいるから、前に進むことができる。「自分だけじゃない」というところがすごくいいな、と。コロナ禍の自粛を経験し、最近は、そんなふうに支えてくれる人の存在がすごく大切だと思うようになりました。

-どんな気持ちでそれぞれの役に取り組みましたか。

武田 この映画の基になった『イケヴァン』のアプリをやらせていただいたら、世界観が独特だったので、「どんな作品になるんだろう?」と思っていたんです。でも、台本を読んでみたら、日常の中にナポレオンが現れるという身近なストーリー。だから、どこにでもいる等身大の女の子として演じればいいんだな…と。

-1人の女性として、リアルに演じようと?

武田 そうですね。頃安(祐良)監督からは「できるだけかわいそうに見えないように」と言われていたので、恋や仕事に悩んではいても、みんなの前では明るくいよう、と。それは日常的にもあり得ることなので、自分の感じていることに、女友達から聞いた話も取り入れつつ、やらせていただきました。

濱 ナポレオンは、「最初はあまり人間味を出さず、途中から人間らしい温かさを出していけたら」という話は監督としていました。その上、基になるアプリのキャラクターもあるので、自分で『イケヴァン』をやってみて、みんながどう思っているのかもリサーチしながら役を作り上げていきました。さらに、現場で「こうだよ」と言われれば、修正して…。

武田 濱さんは大変だったと思います。監督はもちろん、プロデューサーの皆さんも、ずっとモニターの前で「ナポレオンはこういうことはやらないと思う」とか、すごく細かくチェックしていたので。その上で演じられていたので、すごいなぁ…と。

濱 衣装も、普通なら衣装合わせで着るだけですけど、今回は作るところから始めたので、他の作品よりも「みんなで作り上げた」という印象が強いです。ただ、劇中ではナポレオンがしっかりしていて春子の方がドタバタしている印象ですけど、現場では全く逆。武田さんがしっかり引っ張ってくれました。

武田 本当? よかった。

濱 撮影2日目ぐらいのメーク中、武田さんが突然、走る虫のおもちゃを出したんです。それを見たヘアメークさんや衣装部の皆さんが悲鳴を上げちゃって(笑)。

武田 それ、全然しっかりしていない(笑)。

濱 でも、そのおかげで一気に打ち解けて仲良くなれたんです。そういうきっかけを作ってくれたのは、すごくありがたかった。

武田 怒られそうな方にはそういうことはしないんですけど(笑)。濱さんはクールなイメージがあったので、最初は話し掛けていいのか分からなかったんです。でも、メーク部や衣装部の方たちと親しくお話しをされているのを見て、私もきっかけが作れたら、と。「クールに返されたらどうしよう?」と心配だったんですけど、「いい加減にしてくださいよー!(笑)」みたいな、おちゃめな感じだったので、安心しました。

-コロナ禍の影響で撮影が一度延期になったそうですが、その影響はありましたか。

武田 最初の予定では、決まってから撮影開始まで2週間ぐらいしかなかったんです。でも、延期になった後、再開が決まったときは、時間的に余裕があったので、本読みをやることになって。それがすごく助かりました。ナポレオンと春子が2人でいるシーンが、台本からは想像できなかったんです。どういう距離感なのか分からないし、いろいろ不安なところもあって。だけど、本読みのおかげで、ナポレオンの人柄やキャラクター性を感じることができました。

濱 僕も同じです。やっぱり、本読みがあるかないかで、安心感がだいぶ違いますから。現場に入ったときもスムーズにできますし。あと、最初は夏に撮影する予定だったんですけど、僕は衣装が分厚かったので、冬になったのは助かりました(笑)。

武田 暑そうですものね、あれは(笑)。

-最後にお客さんへのメッセージを。

武田 これを見て「人生が変わった!」というような大きな映画ではありませんが、明日の生き方が変わる小さなきっかけを与えてくれる作品だと思うんです。だから、今の私たちに必要とされる映画になっているんじゃないかな、と。「ぜひ見に来てください」とはなかなか言いづらい状況ですけど、私自身も、チームのみんなも、魂を込めて作った作品です。

濱 日々生きている中で不平や不満が出てくるときもあると思うんですけど、それは自分でどうにかするしかないんですよね。一歩を踏み出し、何かを変えていく。それがこの映画の後半にかけてのテーマになっています。そういう当たり前のようで忘れがちなことに気付かせてくれる、すごくポジティブで、元気になれる映画です。感染対策に気を付けながら、見に来てくれたらうれしいです。

(取材・文・写真/井上健一)

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