■成功例にもとづいた、安定のフォーマット

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内容的にも『HERO』と『PRICELESS』には共通点が多い。『HERO』の久利生は、型破りな検事として、事件の大小に関係なく、被害者の立場になって真実を徹底的に追求していた。一方、『PRICELESS』の金田一は、腹違いの兄である新社長・大屋敷(藤木直人)の陰謀により、自らが一文無しになるという被害者になってしまったが、そんな状況でも明るく前向きに生きている。主人公の立ち位置は違うが、どちらもドラマ全体では弱者の救済がテーマとして描かれている。

主人公に強烈なこだわりがあるという部分も共通点として挙げられる。『HERO』の久利生は通販グッズ好きで、通販番組を見てはいろんなものを買っていた。一方、『PRICELESS』の金田一は広島カープのファンで、一文無しになる前はカープのグッズをネットオークションで買ったりしていたし、財産がなくなってからも、会話の途中ではカープの選手の名前を例え話としてよく使っている。さらに、『PRICELESS』では彩矢も歴史オタクで、食玩の戦国武将フィギュアを集めることにこだわっている。

『HERO』では、ラフなスタイルで自ら現場へ出向き、捜査もする久利生に対して、他の検事たちは反発し、迷惑がったりもしたが、最終的にはその一途な正義感に感化されていった。『PRICELESS』でも、彩矢や模合は金田一の不当解雇に巻き込まれてひどい目に遭うが、結果的には金田一の前向きな姿勢に影響されていく。どちらも、まわりが木村拓哉の演じる主人公によって変わったというより、ピュアだった頃の自分を思い出すというスタイルだ。そして、いつの間にか仲間が増えていく。そこに、ドラマとしてのカタルシスがあるわけだ。そういう基本的なフォーマットは、『HERO』でも『PRICELESS』でも変わらない。

木村拓哉が主演するドラマはどうしても視聴率が注目され、ファンもアンチも、何かとはしゃぎ過ぎてしまう傾向があるけど、今期の『PRICELESS』の作り方をみると、意外と楽しめる要素はある。改めて冷静に見てみると、また違った面白さが発見できるかもよ。

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。