(画像左から)岡村俊一、吉田美佳子 撮影:中川實穗 (画像左から)岡村俊一、吉田美佳子 撮影:中川實穗

7月7日に開業した東京・オルタナティブシアターで、こけら落としからロングラン公演を続けている『アラタ~ALATA~』。本作は、海外からの観光客も楽しめるよう、極力言葉を使わず、殺陣やダンスなどのパフォーマンスで構成するノンバーバル(非言語)作品として誕生した公演だ。作を横内謙介、構成・演出を岡村俊一が手掛けるほか、サムライアクション・ディレクターを早乙女友貴、ダンスクリエイターをElina、音楽制作をMiliが担当、次代を担うメンバーが顔を揃えた。

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開幕から約2か月半経っての想いを、構成・演出の岡村と、戦国時代の姫(千代姫)役・吉田美佳子に聞いた。

2020年の東京に迷い込んだ戦国武将・アラタと偶然出会ったOL・こころが、なんとかして彼を元の時代に帰そうとするストーリー。外国人客を意識し、殺陣はもちろん神社や満員電車など“日本らしさ”を多く盛り込んだ内容は評判も上々だ。そこには外国人客ならではの見え方もあるようで「アラタは戦国武将なのですが、日本人は『戦国』という文字を見ると大体『戦国時代、信長』と考えますよね。でも外国人はそこまで日本史を認識していないので、この物語もタイムスリップと捉えず、現代の日本人が戦い始めるように感じたりするようなんです。だからこそ、あらすじとはまた別の、潜在的なストーリーを構成したことが外国の方の心に届いているなと感じます。先日、ニューヨークの方が『これを今ブロードウェイでやらない意味がわからない!』と言ってくれたりしました」(岡村)。

初演から2か月半、ひとりで千代姫を演じ続けている吉田。長く演じるうちに慣れてしまったりあらぬ方向に進んだりしそうなものだが、「ストーリーや自分の役割をより意識するようになって、緻密に気持ちづくりができようになってきたんじゃないかなと感じています」と話す通り、千代姫はより雅さを増し「姫らしさが増した」という感想も届くほど。長い公演で芯をブレさせずに成長を続けられるのは、この作品がこれまでにない挑戦として生まれたことにも理由がある。「歴史に残る、例えば歌舞伎やシェイクスピア作品って、最初に世に出した人が非常に魅力的に演じたんだと思うんですよ。それを観て、人は『あれがいいんだよな』と言うわけで。残っていけるのはそういうものだと思います。だからゼロから始めるときに、“ああいうなにかをやりなさい”という考え方では被り物と同じになってしまう。それぞれの魅力的な部分、ゆっくん(早乙女)なら殺陣、Elinaならダンス、美佳子なら新鮮な輝き、その一番いい部分で演じたものじゃないと残っていけないし、長くやれないなと思ったんですよね」(岡村)。

吉田が「何度観ても新しい発見があると思います。若い世代の方にもたくさん観ていただきたいです!」と語る本作は、東京・オルタナティブシアターにてロングラン上演中。

取材・文:中川實穗