『ア・ラ・カルト2 ~役者と音楽家のいるレストラン』 『ア・ラ・カルト2 ~役者と音楽家のいるレストラン』

冬の演劇界の風物詩『ア・ラ・カルト2 ~役者と音楽家のいるレストラン』が今年もまもなく開幕する。クリスマスのフレンチ・レストランを舞台に、音楽とショートショートで綴るステージだ。初日に先駆け12月6日、東京・青山円形劇場で舞台稽古が行われた。

「ア・ラ・カルト2 ~役者と音楽家のいるレストラン」公演情報

1989年の初演以来20年以上、クリスマスシーズンの青山を生演奏と小粋なお芝居で彩っている『ア・ラ・カルト』。2010年よりキャストの一部をチェンジし、『ア・ラ・カルト2』として生まれ変わったが、アットホームな雰囲気は変わらず。舞台は青山の裏通りにあるレストラン。ここに様々な客が訪れ、チーフの山本光洋、ギャルソンの本多愛也、中山祐一朗らのあたたかいもてなしをうけていく。毎年ストーリーは変わるものの、おなじみのキャラクターも多い。特に人気なのは、高泉淳子演じる「高橋君」だ。以前は毎年このレストランで年上の恋人とのクリスマスデートをし、必ず最後はケンカして終わりながらも毎年少しずつ仲が発展し結婚にまでこぎつけた高橋君。近年の彼は、中山祐一朗扮する後輩の「中田君」とワインの薀蓄を語る会を開催するのがブームなようだ。乾杯の前に必ずスピーチをぶちかますなど、トンデモ知識を振りまきつつもどこか憎めない高橋君。彼をはじめとしたキャラクターが巻き起こすドタバタに笑いながらも、懐かしい友に会えたような懐かしさを観客は抱き、あたたかい気分になる。実際、「これを観ないとクリスマス気分にならない」と毎年欠かさず足を運ぶ客も多い。

さらにお楽しみは、意外なゲストの登場。高泉淳子扮する着物姿のマダム(彼女もまた、おなじみのキャラクターだ)に振り回されるフリートークに加え、芝居でもたまに演者の素の表情が見られるのは『ア・ラ・カルト』ならでは。初日からの数日はROLLYが出演。この日もROLLYらしいバッチリメイク、このレストランのアットホーム感とはそぐわないかと思いきや、高泉の無茶な振りにあせる顔などがキュートで、普段の彼とは違う魅力を見せていた。なお、ゲストはほかに春風亭昇太、池田鉄洋が日替わりで登場する。

ほかにもロマンスの予感を感じさせる男女、カルチャースクールに通う老カップルなど、「クリスマスだから」と少し背伸びしてフレンチ・レストランにやってきた人々の微笑ましい点景が、オムニバスで綴られていく。ギャルソンたちのショータイムではそのはじけっぷりに笑い、老カップルの話にしんみりとする。そしてどんなときも、音楽と美味しい食事がともにある。まるで人生の悲喜こもごもが詰まっているかのような作品。観終わったあとに、今年も悪くない一年だった、そう振り返る余韻が残る、大人のための極上のステージだ。

公演は12月7日(金)から25日(火)まで同劇場にて。その後12月29日(土)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールでも上演される。チケットは発売中。

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