iPad miniとiPad Retinaディスプレイモデル(写真はともにWi-Fiモデル)

11月30日、アップルのタブレット端末「iPad mini」と「iPad Retinaディスプレイモデル(第4世代iPad)」のWi-Fi + Cellular(セルラー)モデルが発売になった。Retinaディスプレイを搭載した第4世代iPadは、新たに「Lightning」コネクタを採用し、処理性能を強化した第3世代iPadのマイナーバージョンアップ版という印象が強く、7.9インチの液晶ディスプレイを搭載して、従来のiPadより軽く、持ち運びやすくなったコンパクトサイズの「iPad mini」のほうに注目が集まっている。

「iPad mini/第4世代iPad」のセルラーモデルは、国内では、ソフトバンクモバイルと、今回から新たに取り扱うKDDI(au)の2社が販売する。発売日当日には、両キャリアの旗艦店で発売記念セレモニーも開催された。製品自体は同じだが、キャリアによって端末価格や月額料金などが異なる。今回は、iPad単独契約と、同一キャリアの携帯電話・スマートフォンとiPadの“2台もち”のセット契約の二つのパターンについて、ソフトバンクモバイルとauのどちらが安いのか、購入から2年間継続利用した場合のトータル費用で比較した。

●セルラーモデルのメリットは端末単体でのデータ通信とテザリング

アップルの「iPad」シリーズのWi-Fiモデルと通信機能つきモデル(セルラーモデル)の違いは、GPSとSIMカードスロットの有無。その他のスペック・機能、サイズなどはモデル・世代ごとに共通だが、セルラーモデルのほうがやや重い。セルラーモデルはWi-Fiモデルとは異なり、携帯電話会社と契約している限り毎月通信料を支払う必要があるが、無線LAN環境がない外出先や移動中などでも端末単体でインターネットに接続でき、通話機能を省いた「大画面スマートフォン」とも利用シーンに制約のない「真のiPad」ともいえる。

最新モデルの「iPad mini/第4世代iPad」は、従来の3Gネットワークに加え、高速通信規格のLTEに対応し、ソフトバンクモバイルと契約すると「SoftBank 4G LTE」、auと契約すると「4G LTE」の対応端末として、下り最大75Mbpsの高速データ通信を利用できる。筆者が今年9月末から10月にかけて計測した「iPhone 5」の実測値と同じだと仮定すると、LTEサービスエリア内の電波状況のいい場所だと20~30Mbps、都心などの混雑した場所や時間帯でも最低4~10Mbpsの速さで通信できるだろう。LTEサービスエリア外では、従来の3Gで通信する。通常の音声通話はできないので、スマートフォン以上に、LTEサービスのエリアの広さ・速さがキャリア選びの鍵になる。

さらに、「テザリングオプション」を申し込めば、iPadをモバイルWi-Fiルータとしても使うことができる。通常は有料だが、両キャリアとも12月31日までに申し込めば、最大2年間、無料で使用できる。一般的なスマートフォンに比べて、iPadはバッテリ駆動時間が長く、実用性は高いだろう。「iPhone 5」など、高速データ通信・テザリング対応スマートフォンと相互にテザリングを利用すれば、バッテリ切れや月7GBまでのデータ通信量の上限はあまり気にしなくていい。

●iPad miniも第4世代iPadも、16GBモデルならキャンペーン適用で実質無料!

支払い方法は、スマートフォン同様、購入時に端末代を全額支払う「一括払い」、毎月の通信料に24回など指定の回数に分割した端末代を上乗せして支払う「分割払い」から選べる。「iPad mini/第4世代iPad」とも、16GBモデルなら端末代は実質無料。最大24か月間、機種ごとに一定金額を割り引くサービス(ソフトバンクモバイルは「月月割」、auは「毎月割」)の割引き金額の合計と端末代が同じになるためだ。

ただし「分割払い」だと容量によって毎月の支払い金額が変わってくるので、今回は「一括払い」を前提に比較した。筆者が「一括払い派」という理由もある。最も安い「iPad mini」の16GBモデルの価格は、ともに3万9600円。32GB/64GBモデルは、ソフトバンクモバイルのほうが240円安い。対して「第4世代iPad」は、16GB/32GB/64GBとも、キャリアによる価格差はない。

「iPad mini」「第4世代iPad」の料金プランは同じ。フラット型パケット定額プラン加入時の月額料金は、現在実施中のキャンペーン(ソフトバンクモバイルは「4G LTE定額プログラム」、auは「基本料割引キャンペーン」)を適用すると、iPad単独契約の場合は同額だが、携帯電話・スマートフォンとiPadの“2台もち”のセット契約の場合は、ソフトバンクモバイルのほうが70円安い。

iPad単独契約の場合、キャンペーン適用後の月額費用(最大2年間)は、基本使用料5460円と必須のインターネット接続サービス料315円の計5775円。3年目以降はキャンペーンの適用がなくなり、計6300円になる。

●セット料金はソフトバンクのほうが月70円、2年間で1680円安い

iPhoneを含む携帯電話・スマートフォンとiPadの2台を同一名義で契約し、所定の条件を満たしたセット割引(ソフトバンクモバイルは「スマホまとめて割」、auは「スマホセット割」)の場合は、通常のキャンペーンの割引に加えて、基本使用料からソフトバンクモバイルの場合は1050円、auの場合980円、さらに割引される。これら二つのキャンペーン適用後の月額料金(最大2年間)は、ソフトバンクモバイルが4725円、auは4795円。差はひと月あたりわずか70円だが、2年間のトータルでは1680円と、無視できない金額になる。

両キャリアとも、iPadの月額費用は、iPad単独よりセット契約のほうが1000円ほど安い。しかし、毎月支払う総額は単独契約よりも高くなるので、よく考えて判断しよう。なお、ソフトバンクモバイルの場合、指定の固定通信サービスとセットで利用すると、利用料金から最大2年間、毎月1480円割り引く「スマホBB割」と「スマホまとめて割」を併用でき、ダブルで割引が適用される。対してauの場合は、同様に指定の固定通信サービスとセットで利用すると、最大2年間、毎月1480円割り引く「auスマートバリュー」と「スマホセット割」は併用できない。ソフトバンクモバイルの「スマホBB割」「スマホまとめて割」併用時と、auの「auスマートバリュー」適用時の差額は1050円、2年間のトータルでは2万5200円になる。一見、似たような料金体系・キャンペーン内容にみえるが、「固定通信サービスとのセット割引」に関してだけは異なっている。

●iPadをサブとして使うならオススメ 基本使用料0円から使えるセットプラン

ソフトバンクモバイルは「スマホまとめて割」、auは「ゼロスタート定額キャンペーン」として、ふだんはスマートフォンをメインに使い、iPadではたまにデータ通信できればいい、Wi-Fi環境のある自宅や職場でしか使わないが、GPSを搭載したiPadが欲しいといった人向けに、使用したデータ通信量に応じて料金が変わる、基本使用料0円からの定額プランも用意している(申込期間は、「ゼロスタート定額キャンペーン」が2012年12月31日、「スマホまとめて割」が2013年1月31日まで)。ただ、上限まで達した場合の基本使用料はフラット型定額プランより高く、わずか11.5MBで上限に達してしまうので、ある程度データ通信を使うつもりなら、最初から、毎月一定金額のフラット型定額プランを選んだほうがいいだろう。また、2段階型プランの場合、別途、公衆無線LANサービス(ソフトバンクWi-Fiスポット、au Wi-Fi SPOT)の月額使用料が必要となるため、Wi-Fiモデルのように、維持費ゼロで使えるわけではない。

残念ながらセット割引は適用されないが、通話の多い人や、手持ちのスマートフォンの画面が小さいと感じている人には、通話メインの従来型携帯電話と「iPad mini」のセルラーモデルとの組み合わせをオススメしたい。iPadシリーズに限らず、スマートフォンやタブレット、従来型の携帯電話などさまざまな選択肢から、最適なプラン、最適な端末を探そう。(BCN・嵯峨野 芙美)