東芝の「スマーボV VC-RB8000」(左上)、シャープの「ココロボ RX-V100」(右上)、米アイロボット社の「ルンバ 780」(前)

勝手に掃除してくれるロボット掃除機は、いまの生活を考えると本当に魅力的。でも、段差があって、モノがいっぱい置いてある私の部屋でも、問題なく走ってくれるのかな――。こんなことを考えて、ロボット掃除機の購入に二の足を踏んでいる人は多いはず。家のなかには、ケーブル、イスの脚、段差など、ロボット掃除機が苦手そうな障害物が必ずある。ここですぐに引っかかって、止まってしまうようでは困る。対面キッチンや廊下などの入り組んだ場所も、ロボット掃除機がくまなく掃除できるのか気になるところだ。せっかく購入するなら、部屋の隅々までキレイにしてくれるロボット掃除機を選びたい。

ロボット掃除機対決の第二弾は、前回に引き続き米アイロボット社の「ルンバ 780」、東芝の「スマーボV VC-RB8000」、シャープの「ココロボ RX-V100」でテスト。障害物があっても止まりにくく、狭い場所でもきちんと掃除できるロボット掃除機は、果たしてどれだろうか。

●<検証1>段差やカーペットを乗り越えるのか

検証した我が家は、夫婦2人、小学2年生、幼稚園生の子ども2人の計4人が暮らしている一戸建て。家具やモノで障害物だらけの環境で、ロボット掃除機にとっては厳しい環境である。

我が家を購入したのは5年ほど前。完全にバリアフリーではないが、新しい家なので一戸建てといっても段差は少ない。リビングの横は和室で、敷居の段差はあるが、これは約5mmと低い。この段差は3製品ともすんなりと乗り越えることができ、隣の和室まで掃除をしてくれた。リビングにはホットカーペットを敷いているが、こちらの段差も問題なく乗り越えた。

最初の障害物になったのは、ホットカーペットのコントローラだった。15×10cmほどの大きさで、厚さは約3cmで、小さなお弁当箱のような形をしている。ここで、「スマーボV」と「ココロボ」が引っかかってしまった。コントローラは、カーペットから取り外しができないので、移動が難しい。また、何か箱をかぶせて掃除機が乗り上げないようにしても、電源ケーブルが出ているので少し浮いた状態になって、ロボット掃除機が当たると外れてしまう。それでも、「ルンバ」はこれくらいの段差はお構いなしでどんどん進んでいく。思わず「エライ!」と叫んでしまった。

床をはう電源ケーブルも厄介だ。ホットカーペット、パソコン、子どもが使うライトなど、見渡してみると我が家は電源ケーブルだらけ。特にプラグから四方八方に飛び出ているケーブルは、ロボット掃除機にとって難関だったようだ。掃除の前になるべく端に寄せるようにしたが、1本だけある8mm程度の太めのケーブルが少しでも浮いていると引っかかってしまう。

「スマーボV」は乗り越えられることもあったが、「ココロボ」は引っかかる確率が高かった。「ルンバ」は乗り上げてもUターンして回避しながら、何度か挑戦して最終的に乗り越えていく。ケーブルに対してもルンバは非常に強かった。

本当は、ケーブルが多い家では、市販のケーブルボックスに入れておくのがいい。両端からケーブルを出してまとめ、壁にはわせておけば、ロボット掃除機も人間も引っかかることはない。ロボット掃除機と上手につき合うには、このようにちょっとした工夫が必要だ。

●<検証2>入り組んでいる場所と入ってほしくない場所

我が家はリビングダイニングで、対面式の小さなキッチンがある。その入口は狭く、さらに食器棚やゴミ箱やカゴなどを置いているために、かなりゴチャゴチャしている。入り口の手前には大きめのダイニングテーブルがあり、イスはベビーチェアも含めて5脚。正直、ロボット掃除機はそこまで掃除できないだろうと、まったく期待していなかったが、「スマーボV」と「ルンバ」はキッチンの奥まで掃除していた。

キッチンには専用のカーペットを敷いてるのだが、「ココロボ」は吸引力が一番強く、カーペットの段差のゴミまできちんと取っていた。ただし、一度しか通らないこともあって、結果的にゴミが残る残念な結果となってしまった。

「スマーボV」は几帳面に真っすぐ動きながら、ていねいにカーペットのゴミも取っていた。ただし、境目にある段差のゴミは取れず、ピーナツの殻など大きめなゴミが残った。

「ルンバ」は狭い場所でも何度も繰り返し掃除し、キッチンの小さなゴミから大きめなゴミまでキレイに取れた。少しぶつかる音が気になったが、掃除後に確認すると、やはり一番キレイだった。

キッチンはなかに入って隅々までキレイにしてほしい場所だが、逆に家のなかには入ってほしくない場所もある。我が家では、部屋の隅に置いた猫のエサや水の入った花瓶などが置いてある場所だ。そんなときに便利なのは、「ルンバ」の「バーチャルウォール機能」や「スマーボV」の「バーチャルガード」。入られたくない場所に“見えない壁”をつくり、赤外線で動きを制御する。

試したところ、ちゃんと“見えない壁”を回避してくれ、留守中も安心して掃除を任せることができた。小さくて置くだけでいいので、簡単だ。毎日のように使う掃除機だからこそ、細かいところまで配慮しているのは好感がもてる。

●<検証3>家具の下に潜り込むか

我が家の最大の難関は、ダイニングテーブルとイスだ。大きめのテーブルとイス、さらには子ども用のイスまであって、テーブルの下をのぞくとイスの脚とテーブルの脚で棒だらけになっている。

ロボット掃除機を動かすときは、入りやすいようにイスを引いておいた。「スマーボV」はいったん入り込むと1本の脚を中心にグルグルと回るように掃除し、移動していく。すべてのイスの脚をグルグルするわけではなく、動きは気まぐれだ。少々ゴミは残ったものの、個人的には合格点をあげられるレベルだった。

「ルンバ」はいったん入り込むと、イスにぶつかりながらどんどん向きを変え、丹念に掃除していく。行ったり来たり、かなりしつこく動き回る。他の2製品より時間はかかるものの、終わったとき、ゴミはなくなっていた。イスを引いたり戻したりが面倒で適当に掃除機をかけてしまう私より、ルンバのほうがキレイに掃除する。

「ココロボ」はテーブルの下に入ったり入らなかったり。テーブルの下でお掃除を終了したり、出られずにそのまま止まってしまったりすることが何度もあった。この状態では、留守中にお任せすることはできそうにない。障害物に弱いようで、あちこちで止まってしまい、そのたびに救出しなければならなかった。

●<結果>障害物が多い部屋で一度も止まらなかったのは「ルンバ」だけ

「スマーボV」は全体的にバランスはいいものの、大きめなゴミを取りこぼしたり、コードの束や段差で乗り上げて止まってしまったりした。動きは直線で几帳面に掃除するので、一見合理的なように見えるが、ロボット掃除機の場合は、何度もしつこく掃除することが大事だ。ゴミが残ってしまっているのは残念だ。

「ココロボ」は吸引力は強いが、掃除する範囲が狭かったり、回数が少なかったりで、ゴミが残ってしまった。また我が家では障害物が多すぎたのか、なかなか部屋の隅まで行く事ができず、やっと入ったと思ってもそこでお掃除が終了して戻ってこれないなど、トラブル続きだった。

ただ、「ココロボ」には愛嬌がある。娘が学校から帰ってきて「あ~、疲れた」とつぶやいたところ、「たまには、ゆっくりしいや」と間髪入れずにねぎらってくれて、娘と大笑いしてしまった。いやしやかわいらしさを感じるロボット掃除機なので、そこに価値を見出す人も多いのではないか。

「ルンバ」はダイニングテーブルの下、キッチンのような狭い間口にも入り込んで、小さいゴミから大きいゴミまで、丹念に掃除してくれる。掃除担当の主婦の立場から判断すると、ロボット掃除機を購入するなら「ルンバ」しか考えられない。これだけモノが多い過酷な条件の家で、一度もエラーを出さず、充電ユニットに戻ってきたのは「ルンバ」だけ。しつこく何度も同じ場所を掃除し、ゴミの取り残しも非常に少ない。ちょっとした段差も力強く乗り越え、瞬時の判断力にすぐれている点に頼もしさを感じる。

●ロボット掃除機と上手につきあう工夫

ロボット掃除機と上手につきあうには、あたりまえのことだが、床の上のモノをどけることだ。我が家は、ロボット掃除機を使う前は大きめの段ボールに床の上のモノをどんどん入れて、ソファの上に避難しておいた。ケーブルは、前述したようにケーブルボックスに収納してまとめておくと、ロボット掃除機の乗り上げがなくなる。

一度、子どもの机の下にクレヨンが落ちていたことに気づかなかったことがあった。クレヨンが折れてブラシに巻き込まれ、そのままロボット掃除機が移動……。ロボット掃除機がクレヨンで畳にお絵かきしてしまい、大慌てで拭き掃除をするハメになってしまった。こんなことがないよう、特に小さいお子さんがいるご家庭では、くれぐれも注意していただきたい。

我が家のようにモノが多い家でどうなるかと思ったが、床のモノをどけるクセをつけてしまえば、ロボット掃除機がホコリや細かいゴミを取り除いてくれる。

ふだんは留守中などにロボット掃除機を走らせておき、週末などに掃除機がけをするというパターンにすれば、掃除機がけの回数がグッと減る。また、隅々まで丁寧に掃除する「ルンバ」ならば、週末の掃除機がけをしなくても十分満足できる仕上がりになるのではないだろうか。

家電量販店の実演コーナーでは、平らな四角いスペースでの掃除しか確認できない。ホントのところどうなんだろう……と思っていたが、これなら主婦の目から見ても合格だ。障害物の多い我が家には「ルンバ」が向いているようなので、いま本気で買おうと考えている。(ライター 石井和美)