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ハリウッド映画へのアジアからの資本提供、ハリウッドのスタジオがアジアに会社を設立などなど、ハリウッドとアジアが急接近している。その理由とは?

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ハリウッドが、アジア、とりわけ中国にラブコールを送っている。全世界で最大の人口を持つ国ながら、政府による厳しい規制のため、長い間、中国はハリウッドが手出しできない市場だった。しかし、近年、中国が少しずつ門戸を広げていくにつれ、中国がもたらす興行成績は急成長。シネコンの建設ラッシュも猛烈なスピードで進んでおり、2015年までには、中国の映画市場は50億ドルに達すると見られている。

しかし、ハリウッドにとってもどかしいのは、いくら緩まったとはいっても、中国政府は外国作品の公開数をまだ制限していること。その抜け道となるのが、中国との共同製作だ。共同製作であれば、枠組みが“外国映画”ではなくなるのである。そのやり方で成功した例は、ウィル・スミスがプロデュースした2010年の『ベスト・キッド』。また2013年公開の『アイアンマン3』も中国との共同製作で、一部のシーンは中国で撮影されている。今年10月に公開された『エクスペンダブルズ2』も、中国の配給会社との交渉の途中、中国と共同製作になる話が持ち上がり、ヒロインが中国人女優になることになった(皮肉にも共同製作の話はその後流れている)。

一方でドリームワークス・アニメーションは、今年2月、中国とのジョイント・ベンチャーで、上海にアニメーション・スタジオを設立すると発表。ここで製作されるのは、中国市場向けのアニメ作品だ。また、映画プロダクション会社レラティビティ・メディアとレジェンダリーも、すでに中国に拠点を構えている。

中国ほどではないにしろ、ボックスオフィスの潜在性を見せている国に対しては、特にアジアがテーマとなる映画でないのにその国のスターを出演させるなどして、話題作りをするのも手段のひとつ。『マイティ・ソー』『バトルシップ』には日本の浅野忠信が起用されたし、2013年公開の『G.I.ジョー バック2リベンジ』にはイ・ビョンホン、『クラウド アトラス』にはペ・ドゥナと韓国勢が出演している。

もちろん、ハリウッドはアジアだけに関心を持っているわけではない。たとえば、急速に売り上げを伸ばしているロシアやブラジルは、非常に重要視されているマーケット。『ワイルド・スピードMEGA MAX』の舞台がブラジルだったり、『トランスフォーマー』の3作目のワールド・プレミア開催地がモスクワだったりしたのは、決して偶然ではないのである。ハリウッドの目は、今、これまでになく外に向いているのだ。

「ぴあ Movie Special 2012-2013」より
文:猿渡由紀