「iPhone 5」に加え、ドコモ、auのAndroid搭載スマートフォンも好調に売れて、2012年11月の携帯電話全体の月間販売台数に占めるスマートフォンの割合(スマートフォン率)は80.9%と、ついに8割を突破した。販売台数は過去3番目に多く、「iPhone 4S」発売直後の2011年11月を大幅に上回った。キャリア別では、主要3キャリアがシェア30%台前半で拮抗。ソフトバンクモバイルとauがほぼ同率1位で並び、やや離れてドコモが続いた。

●「iPhone 5」が引き続き実質トップ、シェアは2キャリア合わせて約4割

まずは、キャリア・容量ごとに別機種としてカウントした機種別のランキングからみていこう。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、SIMフリー端末を含む携帯電話全体の11月の販売台数1位は、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」の32GBモデル、2位は1.7ポイント差で同16GBモデルだった。「iPhone 5」に囲まれるかたちで、ドコモの「Xperia AX SO-01E」が5位にランクインした。これと基本性能はほぼ同じで、事実上、兄弟機種にあたるauの「Xperia VL SOL2」も10位つけている。

容量の異なる「iPhone 5/4S」をキャリアごとに合算すると、トップ3は、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」(22.8%)、auの「iPhone 5」(15.5%)、ドコモの「Xperia AX SO-01E」(5.1%)。2キャリア販売分を合算した「iPhone 5」全体の販売台数シェアは前月とほぼ同水準の38.3%で、集計対象をスマートフォンに限ると47.4%とほぼ半数を占めた。

「iPhone 5」は、9月(18.0%)、10月(37.0%)、11月(38.3%)と、3か月連続で実質トップを獲得。しかし、予約分がはけた11月がピークだろう。12月第1週(12月3~9日)、第2週(12月10~16日)の販売台数は11月上旬の半分程度で、さすがに勢いは衰えつつある。

●スマートフォンに限ったキャリア別シェアは3キャリアが拮抗

続いて、主要3キャリア、ドコモ・au・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、「iPhone 5/4S」については、最初から容量を合算して1機種としてカウントしている。

ドコモは、11月16日発売の冬モデル「Xperia AX SO-01E」がシェア13.8%を占め、初めて1位を獲得した。一方、6月以降、5か月連続トップだった「GALAXY S III SC-06D」は5位にダウンした。2位・3位と、5位から8位までは僅差で、約1年ぶりに登場したiモード対応ケータイ「P-01E」が3位に食い込んだ。

auは、前月同様、「iPhone 5」がシェア49.7%でトップ。また、11月に発売した「4G LTE」対応Android搭載スマートフォン8機種のうち、3位に「Xperia VL SOL2」、4位に「AQUOS PHONE SERIE SHL21」、5位に「Optimus G LGL21」がランクインした。冬モデル各機種の売れ行きは、単体で見ると「iPhone 5」には及ばないが、合算するとau全体の20.6%を占め、なかなか好調な立ち上がりといえる。

ソフトバンクモバイルも、前月同様、「iPhone 5」がトップ。シェアは「iPhone 5」だけで72.1%、「iPhone 4S」を含めると79.5%に達し、iPhone率は再び8割近くに上昇した。

●「ドコモ一人負け」は真実か? 2012年の勝敗は12月の売れ行きで決まる

スマートフォンに限ってキャリア別販売台数シェアを集計すると、11月は、ソフトバンクモバイル(34.03%)、au(34.00%)、ドコモ(31.46%)の順となり、ソフトバンクモバイルがわずかにauを上回ってトップに立った。主要3キャリアのうち、唯一iPhoneを扱っていないドコモは、契約数は最も多いものの、MNPによる転出超過が続いていることから「一人負け」といわれ、11月はついに契約数が減少に転じた(4万800件の純減)。しかし「BCNランキング」では、販売台数は不振だった前月よりも増えており、急に大きく落ち込んだわけではない。むしろ、冬モデルの発売で回復基調にある。また、スマートフォンの使い勝手を左右する「OS」という軸でみると、11月は前月14.1ポイントもあったiOSとAndroidのシェアの差が4.7ポイントまで接近し、Androidが盛り返しつつある。

例年、12月は、進学・就職など、いわゆる新生活需要が高まる3月の次に携帯電話が多く売れる時期。ただ、本格的なスマートフォンブームが始まった一昨年や大きく盛り上がった昨年に比べ、今年は若干盛り上がりに欠ける印象だ。ドコモは「Xi(クロッシィ)」、auは「4G LTE」、ソフトバンクモバイルは「SoftBank 4G/4G LTE」のサービス名でそれぞれ展開している高速データ通信サービスのサービスエリア・速度に対する懸念や発売時期の分散化も影響しているかもしれない。

11月末から12月上旬にかけて、auの「HTC J butterfly HTL21」や、ドコモの「GALAXY S III α SC-03E」「ARROWS V F-04E」など、注目機種が相次いで発売された。なかでも11月29日発売の「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」は、今のところドコモの2012年冬モデルのなかで「Xperia AX SO-01E」に次いで多く売れている。シャープ製スマートフォンでは久しぶりのヒットといっていいだろう。来月以降も、「ドコモ一人負け」といわれてしまうのか。勝負は、12月後半、残り2週間弱にかかっている。(BCN・嵯峨野 芙美)

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