『おだやかな日常』主演女優が語る、東京で震災のドラマを描くことの意義

2012.12.20 17:36配信
『おだやかな日常』に主演した杉野希妃

2010年の『ふゆの獣』で同年の東京フィルメックスのグランプリに輝いた内田伸輝監督が、東日本大震災後の東京を舞台に、原発事故が引き起こした放射能の恐怖に怯えるふたりの主婦の姿を生々しいタッチで描いた問題作『おだやかな日常』。本作にプロデューサー兼主演として参加した杉野希妃は、キム・ギドク監督の『絶対の愛』(2006年)への出演で注目を集め、同様に製作と主演を兼任した深田晃司監督の『歓待』(2010年)が世界中の映画祭で大反響を巻き起こしたアジア・インディーズ界のミューズ。そんな彼女が本作に込めた想いを熱く語ってくれた。

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「監督からのペラ1枚のプロットに書いてあった、東京で震災のドラマを描くことに私も意義があるなと思ったんです」とまずはこのプロジェクトに参加したきっかけを振り返った杉野。「福島や仙台の被災地にカメラを向けた人はいたけれど、日本の首都で、被災地から微妙な距離にあって、危険なのか安全なのか分からない東京に目を向けた作品はなかったですからね。震災後、東京が人としてのあり方や他人とのコミュニケ―ションのとり方をより問われる場所になったなと個人的に感じていたのも大きかったです」

映画は大切なものを守るために懸命に生きる現代人の姿を、子供がいないユカコと、5歳の愛娘とのふたりきりの生活を始めたサエコ(杉野)という対照的なふたりの女性の人生を交錯させながら映し出していく。それについて杉野は「未来を築く子供を産むのは女性だから、女性と子供にフォーカスを当てました」と自身の考えを示し、現在進行形のデリケートな問題を扱うことに対して「被災地の人が見たらどう思うだろう?という葛藤と、それでも表現者として作らなければいけないという衝動のせめぎ合いがあった」ことを明かした。

その上で「別に映画で私はこう思っているんだってことを吐き出したいわけではないんですよ」と続ける。「逆に映画を観てどう感じるかにはその人の人生観や価値観が投影されると思うから、この映画も観て不快感や嫌悪感を持つ人がいて当たり前。ただ、そこでなぜ不快感、嫌悪感があるのかを考えて欲しい。もしかしたら、その考えたことの先に、これからの人間関係や日本社会のあり方が隠されているかもしれないから」。さあ、あなたは本作を観て何を想うだろうか?

『ぴあ Movie Special 2012-2013』より 

『おだやかな日常』

『ぴあ Movie Special 2012-2013』
発売中

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