ローランド・エメリッヒ監督

イギリスの劇作家であるウィリアム・シェイクスピアが生んだ名作の数々は、実は別人が書いていた…。にわかには信じがたい仮説を下敷きに、代筆者として取りざたされる貴族作家の知られざる半生と恋、そして陰謀を描いた歴史ミステリー『もうひとりのシェイクスピア』がついに12月22日(土)、全国で公開される。メガホンを執るのは、『インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』『2012』といったハリウッド超大作を手掛けてきたローランド・エメリッヒ監督。これまで幾度となく世界を“破壊”させたディザスター映画の名匠が、新作のテーマにシェイクスピアを選んだ理由を「私は常に論争の的になるような題材に興味があるんだ」と語っている。

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「当初は、シェイクスピアが生み出した傑作の数々を振り返り、作家・シェイクスピアとして称えたいと思っていたんだ。ところが、ふと人間の本質を描く戯曲を30以上も書いた彼はどんな人物なんだろうと考えると…」とエメリッヒ監督。以前、オックスフォード大学で“シェイクスピア別人説”の討論が行われたと知り、「まずは真実を知りたい」と持ち前の好奇心に火がついたのだとか。

そんなエメリッヒ監督が出会ったのが、“シェイクスピア別人説”を20年以上研究してきたという脚本家のジョン・オーロフ氏。長年本作の企画を温めていたが、アカデミー賞受賞作『恋におちたシェイクスピア』(98/ジョン・マッデン監督)が製作されたことにより一度は断念していたという。エメリッヒ監督は「脚本を読んで、ただ一言『素晴らしい! なんと驚くべき物語なんだ』と心を動かされた」といい、「読み進めるうちに『シェイクスピアは本当の作者でない。彼は書いていない』と確信した」と断言する。

なぜ、そこまで言い切ることができるのか? その“答え”がエメリッヒ監督の熱意によって、本作『もうひとりのシェイクスピア』に緻密に描かれている。これまでのイメージを打ち破る作風に加えて、エリザベス王朝時代の衣装・美術を再現した緻密な世界観、16世紀末ロンドンを追体験させる最新VFXなどエメリッヒ監督の本領が発揮される映像世界も見逃せないポイントだ。

『もうひとりのシェイクスピア』

文:内田 涼