レンズが生きる本格ミラーレス一眼「LUMIX DMC-GH3」、開発の狙いと今後の方向を聞く

2012.12.27 20:40配信
パナソニック AVCネットワーク社 イメージング事業グループ イメージングネットワーク1ビジネスユニット マーチャンダイジンググループ マーケティング企画チームの井上義之参事

12月13日、パナソニックが満を持して発売したミラーレス一眼のフラッグシップモデル「LUMIX DMC-GH3」。その開発の狙いやレンズ開発、同社のデジタルカメラの今後の方向性について、パナソニック AVCネットワーク社 イメージング事業グループ イメージングネットワーク1ビジネスユニット マーチャンダイジンググループ マーケティング企画チームの井上義之参事に話を聞いた。

●ハイエンドにシリーズの可能性を広げるGH3

「製品のコンセプトは、その姿を見ていただければわかる通り、まさに『本格的なカメラ』だ」と語る井上義之参事。Gシリーズの可能性を広げる製品だという。2008年10月に発売したマイクロフォーサーズ規格の1号機「LUMIX DMC-G1」でミラーレス一眼市場を切り開いたパナソニックは、以来多くの製品を世に送り出してきた。「デジタルカメラでコンパクトと一眼レフの間の市場をつくるという当初の目的は達成し、新たな市場ができた。そこで、今度はその幅を上に広げる目的でGH3を発売した」(井上参事)。

これまでパナソニックのミラーレス一眼は、コンパクトカメラに近い操作性や価格を目指したものが多く、コンパクトからのステップアップ層に重きを置く「カジュアル路線」を歩んできた感がある。一方で、過酷な条件での撮影や拡張性という点では、やや物足りない部分があった。そうした部分をカバーするのが、「GH3」だ。

井上参事は「製品開発にあたって特に力を入れたのは、拡張性と携帯するときの頑丈さ、プロでも使えるフォーマットの三つ」と語る。「拡張性に関しては、通常の一眼レフと同じように、縦位置グリップやフラッシュを新たに用意した。また、外部マイクなども加えて、システムとして機能するようにした」。さらに、「携帯するときの頑丈さについては、防塵防滴のマグネシウムボディを採用し、過酷な条件でも十分使えるようなボディにした」という。

「GHシリーズ」には、初号機の「GH1」から「動画に強い」というコンセプトがある。しかしこの「GH3」は、「動画はもちろん、静止画も最高峰のフラッグシップカメラ」(井上参事)という位置づけだ。9月にフォトキナで「GH3」を発表した際も、会場に試用したプロカメラマンを招き、大きなスクリーンに撮影画像を投影しながら、画質のよさとプロの使用に耐える堅牢性をアピールしていた。

プロでも使えるフォーマットに関して、井上参事は「特に動画のプロユースに耐えることを目指した」と語る。「もちろん、プロにとっては必ずしも十分な性能だとはいえない。しかし、プロにも使えるフォーマットを採用することで、最低限の水準はクリアしている。『GH2』発売後に、アメリカやヨーロッパの動画を撮るプロのクリエーター100人以上にインタビューして、『これは欠かせない』という機能をふんだんに盛り込んだ」。

例えば、AVCHD Progressive 60Pフルハイビジョンムービーが撮影でき、「どこで切っても、フレームがそのままキャプチャされている。だから、どこで切っても変な絵にはならならず、編集に向いた素材を撮影することができる」という。また、欧州の放送局に納品できる画像フォーマットの採用や、プロ用ビデオ機材には欠かせないタイムコード記録にも対応していることも、プロ向けビデオ機材で定評のあるパナソニックらしい仕様だ。

●「いいボディ」で「いいレンズ」が生きる

「これまでは、ある意味、意識的にコンパクトカメラ風のデザインを採用してきた。それを、11年11月に発売した『GX1』あたりから、カメラらしいカメラに振りはじめた。高級レンズの『Xシリーズ』もその流れ」と語る井上参事。この路線を採った理由を聞くと、「高級モデルのニーズが意外に高いことがわかってきたから。そして、いいボディによっていいレンズが生きる」という答えが返ってきた。

パナソニックのレンズには、マイクロフォーサーズ規格を立ち上げた頃から、定評あるレンズが多い。例えば標準のキットレンズだった「LUMIX G 20mm/F1.7 ASPH.」や、マイクロフォーサーズだからこそ実現できたコンパクトな超広角ズーム「LUMIX G VARIO 7-14mm/F4.0 ASPH.」、ライカブランドを冠したボケ味の美しいマクロレンズ「LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S.」などだ。さらに、標準ズームで待望の全域F2.8という明るさを実現した「LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH./POWER O.I.S」を筆頭とする高級レンズ「Xシリーズ」を送り出し、「いいレンズ」のラインアップがますます厚くなってきた。本格ボディ発売の機は熟していた。

パナソニックは、コンパクトカメラにもライカブランドを冠したレンズを採用するなど、ライカとの関係は深い。いいレンズをつくることができる素地として、「ライカのノウハウは大きい」という。「ライカの冠がついていないレンズでも、品質保証そのものはライカの水準と同じくらいの製品が多い」そうだ。

ライカの何がすごいのか。井上参事によると「ライカは技術力が高いというよりも、難しい」という。ライカのレンズには、大きく三つの品質基準がある。「まず、周辺部でも解像力の低下が起きないこと。次に、ディストーション(歪曲収差=像のゆがみ)を抑えること。そして、三つ目が、変なゴーストやフレアを抑えること。この三つが基本」(井上参事)。ここまでは、ごく普通の品質基準のように思える。

しかし、「これらを設計段階でレビューし、製造段階でレビューし、製造中のデータをライカに送ってチェックされ、基準を満たさなければならない。生産品質管理まで含んだ基準だから、クリアするのは難しい」という。「いいレンズ」が生まれる背景にはこうした秘密が隠されていたのだ。

こうした厳しい品質基準をクリアしたレンズは、当然のように高価。先ほど紹介した「12-35mm/F2.8」は同社の直販サイトで12万4950円もする。今回発売したフラッグシップ「GH3」のボディとほとんど同じ価格だ。しかし、それでも結構売れているという。井上参事は「予想通り。絶対売れると思っていた」と自信たっぷりに笑った。価格が高くても、価値が認められればしっかり売れる、という好例だろう。

●動画を意識するとちょうどいいフォーサーズサイズの撮像素子

このところ、デジタルカメラは撮像素子の大型化が一つのトレンドになってきている。パナソニックが採用しているフォーサーズサイズの撮像素子は、35mmフルサイズのほぼ半分。この小さめのサイズが、今後の製品展開の足かせになることはないのだろうか。

「マイクロフォーサーズの理念には、もともと『動画との親和性』という項目を掲げている。それを考えると、フルサイズはやや疑問。静止画と動画を両立させるとなると、シネマのスーパー35、つまり、35mmのハーフサイズに近いマイクロフォーサーズがピッタリになる」と井上参事。それでも、大きなセンサの可能性について否定はしない。「研究課題ではあります」としながら「仮にやるとしても、なにも考えずにやることはない。何らかのフィロソフィーをもってやるべきだろう。まあ、実際にやっているかどうかに関してはノーコメント。また、センサの大型化でマウントが乱立するのは決してよいことではない、ユーザーを混乱させるだけだ。仮にやるとしても、少なくとも5年分のレンズのロードマップを考えて始めるべき」と語った。

一方、このところスマートフォンに押されっぱなしのコンパクトカメラはどうだろう。「流れは二つある。一つはWi-FiやBluetoothなどを使った他の機器との接続性を高め、ネットとの親和性をより高めていく方向。そしてもう一つは、プレミアムコンパクトによる特徴の先鋭化だ」(井上参事)。「例えば、35mmフルサイズ換算で広角25mm~超望遠600mmまで全域でF2.8という非常に明るいレンズを搭載する『LUMIX DMC-FX200L』がある。これは、一眼レフでは絶対できない」。確かに、35mmフルサイズ用のレンズで600mm/F2.8というレンズは聞いたことがない。仮にあったとしても、大砲ぐらいの大きさになるのではないだろうか。このカメラなら、撮影が難しいとされるカワセミも狙えそうだ。

「また、一眼系のレンズ交換カメラでは絶対撮れないものを撮ることができるプレミアムコンパクト『LUMIX DMC-LX7』もある。例えば、シャッターが開いている間に絞りやフォーカスを動かして撮影することで、ふんわりした画像や幻想的な表現を手軽に撮ることができる機能だ。これも、レンズ交換型カメラでは絶対できない撮影方法。こうした特徴を先鋭化していくのがもう一つの方向だ」。

本格派カメラの投入でラインアップに厚みが出てきたパナソニック。高機能レンズや個性派コンパクトも含めて、写真撮影を一層楽しめるモデルの充実にこれからも期待がもてそうだ。(道越一郎)

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