“ドキュメンタリー”+“3D”。松江哲明監督が異色作に挑んだ理由とは

2012.12.28 18:26配信
『フラッシュバックメモリーズ3D』の松江哲明監督

『あんにょん由美香』(2009)では2005年に急逝した女優・林由美香の軌跡に関係者の証言をもとに迫り、『トーキョードリフター』(2011)では東日本大震災後の暗く沈んだ東京を記録するなど、一貫してドキュメンタリー映画の形で現実と向き合ってきた松江哲明監督。そんな彼の最新作『フラッシュバックメモリーズ3D』は、事故で記憶障害を負ったディジュリドゥ奏者GOMAが、リハビリを経て徐々に復活していく過程を3Dで追った異色作だ。

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「GOMAさんのライブに初めて行ったときに病気の人ではなく、音楽の人だと思ったし、すごく感動して、それを表現しないと失礼だと思ったんです」。その段階で「3Dで撮りたいと言っていた」と松江監督は振り返り、本作がドキュメンタリー初の3D作品になった理由を次のように説明する。「3DはGOMAさんの音楽や症状を伝えるのに最適で。奥行きを使って、GOMAさんが失った過去と現在を同時に見せられるのもいいなと思ったんです」。

さらに「そもそも“記憶”は僕の映画の重要なモチーフ」と自作を分析。「ドキュメンタリーは対象を撮れないことをまず自覚することだと思っていて。『あんにょん由美香』では関係者の記憶を撮ることで新しい物語を見つけたし、今回のGOMAさんへのアプローチは『トーキョードリフター』の震災後の表現に近いですね。僕は現実に対して何も言えない。今回も撮りながら気づいた、いまを生きるGOMAさんを映画にしただけです」。

完成した映画は、GOMAの数奇な人生と奇跡的な復活劇を彼が演奏するディジュリドゥのグルーブする大音響とともに伝え、観る者の心を揺さぶる。「僕はいつもドキュメンタリーは現実を素材にした物語と言っています。今回もGOMAさんの“過去のものも未来のものも同じに見える”という言葉に衝撃を受け、“未来の僕へ。覚えているかい?”という字幕を足しましたから。どんなにお金を払っても準備できないのが現実で、僕は現実に触発される形でしか撮れない。そこで現実が僕の予想を裏切るから映画が面白くなるんです」。

ドキュメンタリーをあまり観たことがない人もぜひ映画館に足を運んで欲しい。未曾有の興奮と感動が味わえる、驚きの映像体験になるはずだから。

『ぴあ Movie Special 2012-2013』より 

『フラッシュバックメモリーズ3D』

『ぴあ Movie Special 2012-2013』
発売中

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