野田秀樹 (撮影:源賀津己) 野田秀樹 (撮影:源賀津己)

野田秀樹主演の舞台にも、三谷幸喜作・演出作品にも、なじみが深い。そんな観客でさえも、両方が一度に味わえる機会を予想することはなかっただろう。今年4月開幕の『おのれナポレオン』でついに実現することになった顔合わせを、当人はどう感じているのか。自作以外の舞台には初出演となる野田にインタビューし、心境を訊いた。

野田が三谷の劇世界に触れるようになったのは、『12人の優しい日本人』などの評判で三谷率いる東京サンシャインボーイズが躍進した1990年代前半のこと。野田は言う。「劇場に『ショウ・マスト・ゴー・オン』を観に行ったんだけど、すごく面白かった。それから俺の芝居も観に来てくれるようになって、付き合いが始まりました。といっても、食事しに行くような仲じゃない。友情というより、演劇をやっている同業者としてのリスペクトですね」。

「リスペクト」という言葉が印象的だ。「大震災後に三谷さんは、“次こそは、希望の持てるような明るい作品を届けたい”と表明していた。支援という直接的な行動に出るのではなく、作品に思いを込める。それは、ものをつくる人間として立派な姿勢だと思うし、尊敬できることです」。

演じる役は、世界の歴史を大きく動かした一方で、自らも運命に翻弄され、栄光と屈辱に引き裂かれてしまった“英雄”ナポレオン・ボナパルト。複雑な人物像にどんな血肉を与えるか。劇作と演出の役割を離れ、演技に一点集中する“役者・野田秀樹”に寄せられる期待は絶大だ。「僕を役者として使おうというのは、ある種の“ノスタルジア”なんじゃないかな、三谷さんの。だから、その期待にちゃんと応えられるか、ドキドキしてます」と正直な胸の内を明かしながら、「乗馬の練習とかしておかなくていいのかな? 稽古場でいきなり要求されても困るからさ」と笑いを交える。

“笑い”ということに関しては、三谷作品と自作それぞれのテイストについての分析が興味深い。「僕の笑いは、ある高いテンションを作るということ。一方、三谷さんの笑いは、中間より少し上のテンションで、話術を使って笑いをとる。そういう違いがあると思います」。

『おのれナポレオン』にはほかに、「俺とラブシーンがあったら、背丈の違いで面白いかもしれない」と冗談めかして野田が語る天海祐希を始め、山本耕史、浅利陽介、今井朋彦、内野聖陽が出演する。4月6日(土)・7日(日)にプレビュー公演をおこなった後、4月9日(火)から5月12日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて上演。チケットぴあでは、有料会員向けWEB抽選先行「いち早プレリザーブ」を1月6日(日)11:00から9日(水)11:00まで受付。