宝塚歌劇月組『ベルサイユのばら』 宝塚歌劇月組『ベルサイユのばら』 撮影:三上富之

2014年の100周年に向けて宝塚歌劇がラストスパート。1月1日、兵庫・宝塚大劇場にて月組公演『ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-』が幕を開けた。

宝塚歌劇月組『ベルサイユのばら』のチケット情報

1974年初演の本作は、当時、社会現象を起こすまでの大ヒットを記録。軸となるキャラクターや演出を変えながら幾度となく再演されてきた、タカラヅカの代表作と言える作品だ。

本作は、市民の不満が高まりを見せる王妃マリー・アントワネットの時代、18世紀のフランスが舞台。代々王家に仕えるジャルジェ将軍家に生まれ、軍人として生きる男装の麗人・オスカルと、彼女を一途に愛し、陰ながら支える幼なじみ・アンドレの愛を巡る物語を軸に展開していく。重税と貧困に喘ぐ国民を救うべく、王宮警護の近衛隊から国民を守る衛兵隊への転属を願い出たオスカル。アランを中心に平民出身の気性の荒い隊士が揃う衛兵隊は、オスカルへの反抗心をあらわにするが、オスカルの熱意で次第に心を開いていく。一方アンドレは、オスカルの結婚話を知り…。

幕開きからピンクのばらが散りばめられた、「これぞベルばら!」な少女マンガの世界観に胸が高鳴る。プロローグではテーマ曲を歌い継ぎ、観客を一気にベルばらの世界へと誘い込む。当時のフランスの時代背景も重要となるベルばらでは、その明と暗の対比をくっきりと浮かび上がらせた演出で見せる。絢爛豪華に作り込み、観客をうっとりさせたかと思えば、平民の悲惨な状況をシリアスに描き出し、緩急をつけた演出で心を揺さぶる。クライマックスでは、男役トップスター・龍真咲(りゅう・まさき)が「いちばんの見どころ」と語っていたように、思わず声が上がるほどの大掛かりな演出が用意されている。

オスカルとアンドレを役替わりで演じる龍と準トップスター・明日海(あすみ)りお。この日オスカルを演じた龍は、男装の麗人らしく、凛々しくも儚げ。普段の男役では見せない女性としての柔らかさを忍ばせながら表現している。一方、明日海もオスカルを心密かに慕うアンドレを好演。目が見えなくなっていく焦りや、それでもオスカルを守ろうとする姿にグッとさせられる。ふたりの周りを固めるのは、ジャルジェ家に縁のある娘・ロザリーを演じる愛希(まなき)れいか、その夫で新聞記者のベルナールを演じる美弥(みや)るりかたち。特にアラン役の星条海斗(せいじょう・かいと)の存在感たっぷりの演技に目を引かれるはずだ。

宝塚大劇場では、花組トップスター・蘭寿(らんじゅ)とむ、雪組トップスター・壮一帆(そう・かずほ)もアンドレ役として特別出演することでも話題。99周年の幕開きにぴったりの、華やかな見応えあるステージで、ベルばらとタカラヅカ、双方の魅力がたっぷりと味わえる仕上がりだ。

兵庫公演は2月4日(月)まで上演中。また、2月15日(金) ~ 3月24日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは1月13日(日)より一般発売開始。

取材・文:黒石悦子