DEZERT・千秋(Vo)/(撮影・さわきみのり)

椅子から立ち上がりスティックを振り上げるSORA、中指をたてるMiyako、ステージ前方まで駆け寄るSacchan、物々しい雰囲気の中『大塚ヘッドロック』がスタート。椅子ありの会場でもかまうことなく左右に揺れるオーディエンスたち。

「いま地球上に生きてる全生物にささげます……このラブソングを!」という千秋の壮大な前フリから始まったのは『「殺意」』。待ってましたといわんばかりにヘドバンが始まる。『「ここにラブソングを」 』ではストロボ照明によるメンバーのシルエットがステージに刻まれる演出が印象的であった。

暗転するステージ、Miyakoの爪弾くギターからストレートなロックチューン『「軽蔑」』に入る。曲世界の青さ、痛みを象徴するようなブルーのライトがステージを染め上げる。さきほどのストロボもしかり、この日のライティングは”光の演出”と呼べるような繊細で美しいものだったということはここに記しておきたい。

DEZERT/(撮影・さわきみのり)

『「問題作」 』では千秋が「全部が狂っている。って気がついた」と歌いながら怪しげに手招きし、「今日が夢でも」と、歌詞の最後のフレーズをうわ言のように繰り返す中、『「誤解」』へ流れ込む。「違う、それじゃない 僕が欲しいのはそれじゃない」と歌い上げ、そんな己に対して自問自答するように叫ぶ「じゃあどれだ!」。DEZERTの持つ陰鬱な精神世界が投影されたダウナーな『「宗教」』、『「排泄物」』を淡々と繰り出し、このセクションはまるでひとつの演劇のようでもあり、見入るしかなかった。

楽器隊が不穏なサウンドを奏でる中、、左右に別れるオーディエンスたち。それを確認するかのようにフロアを眺め、「僕たちも含め、大人たちはルールなんてクソくらえと言うけれど、ルールは大事です。ルールなんてないというけれど、大事です。たとえば、君たちはココ(ステージ)に来ちゃいけないとか。ココに来ちゃいけないとか」大事なことは2回言う千秋。「危ないことをしよう! 全責任は主催のホットスタッフがとる! 蹴散らそうか! 何を? なんでもいいさ!」と宣言。

『包丁の正しい使い方~終息編~』のイントロが流れる中、「さあどうする?」とオーディエンスを挑発する。前方の警備スタッフの持つ黄色と黒のロープがぴんと張り詰める。指定席を無視してWoDが発生し、会場をぐわんぐわん揺らす。

DEZERT・MIyako(G)/(撮影・さわきみのり)

「さあ、洗脳の時間です!」と「洗脳」コールから始まった『「教育」 』、『「秘密」 』の曲間では「『千秋を救うツアー』のテーマは……地面より下へ、今の場所より下へ……下へ……! もっと! 下へ! 下へ!」と千秋が叫び、ヘドバンで埋め尽くされてさながら地獄の底のようだ。『「君の子宮を触る」 』と畳み掛けていき、きわめつけは本編ラストの『「変態」 』だ。

オーディエンスが手拍子する中、「ホールっていいねえ…って全然思いません! 我慢できないんだ! 来い! 誰か来る『変態』はいねえか! 乗り越えてこい!」とフロアにむかって叫ぶ。「責任はホットスタッフがとる!」2回目だぞそれ。ひとり、またひとりステージに詰めかけ、フロア前方はオールスタンディングと化し、警備スタッフ、そして本来は警備しない方のスタッフも警戒体制に入る。オーディエンスは「ただし飛ぶなよ!」という千秋の言葉も無視して中野サンプラザ(※築40年以上)を揺らす。

DEZERT/(撮影・さわきみのり)

「口に出せばいい ほらやりたいようにやって死ねばいい 本来そういうもの」

歌詞のとおりの光景が目に焼き付く。全てをやりきったようにはけていく千秋。スティックを高く投げるSORA、ギターを掲げるMiyako、ひょうひょうとステージをあとにするSacchan。そんな四者四様の佇まいがまたDEZERTのおもしろいところ。