長谷川博己

2011年の最低平均視聴率ドラマという決して名誉とは言えない記録の一方で、給食から教師のストレス、中学生の性行為といった現代の学校が抱える論点を生々しく描き出し、ギャラクシー賞など様々な賞に輝いた連続ドラマ「鈴木先生」。その続編となる劇場版『映画 鈴木先生』の公開を前に主演を務める長谷川博己が改めて、ドラマそして今回の映画について語った。

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膨大なセリフの量に時間的な制約。ヘビーな物語の内容も含め、ドラマ撮影時からかなり過酷な現場だったようだが、そんな中で長谷川は生徒役の若い俳優たちを前に常に“教師”であることを心がけた。「生徒たちを前にした先生の気持ちがよく分かりましたよ。やはり俳優の先輩としてちゃんとしていないといけないという気持ちはありました。彼らを前に演説のように話すシーンもあるし、彼らが実際に『すごいな』と思えないと、先生と生徒の関係性になれないと思うんです。そうじゃないと彼らは甘く見てきますからね、15歳って(笑)。弱みは見せられないという気持ちでした」と語る。

鈴木先生のストレス(?)を反映させたような様々な妄想シーンが原作漫画とは異なる映像ならではの見どころとなっていたが劇場版でも妄想は健在! 演じる長谷川にとっても過酷な撮影の中で「自由になれる唯一の憩いの場だった」とか。「いろんなことに挑戦できて面白かったですね。『妄想なんだから何やってもいいだろう!』って(笑)。ドラマの4話で『小川!(※鈴木先生が好意を抱く女生徒)』って叫びながら枕を抱いて腰振ったり、白目むいてイッちゃうような顔したりもしたけど、さすがにやり過ぎでカットされてましたね(苦笑)。役者としてもやっちゃいけないことまでトライさせてもらえるシーンで楽しかったです」と意外な息抜き(?)を明かしてくれた。

ドラマと映画の撮影の間にはあの「家政婦のミタ」に出演。さらに今年は大河ドラマ「八重の桜」に出演するなど、ここ2年ほどで確実に求められる俳優になってきたが「僕自身は変わってないです…というか本当に求められてるんですか?」とそっけない。そして言葉を慎重に選びながら「むしろこれからが大事。目標というか、こうなりたいというもの――そこに向かって芯の部分を太くしていかなくちゃいけないと思ってます」と静かに決意を語る。具体的になりたい自分とは? そう質問を重ねると「それは言えません」とフワリと優しい笑みを浮かべた。

『映画 鈴木先生』

取材・文・写真:黒豆直樹
ヘアメイク:酒井啓介(MARRVEE)
スタイリスト:中村剛