左からみのすけ、KERA、松永玲子 (撮影:源賀津己) 左からみのすけ、KERA、松永玲子 (撮影:源賀津己)

昨年12月に開幕し、その広大にして精密なストーリーテリングが評判を呼ぶ『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』に続いて、早くもKERAが新たな舞台を手がける。ナイロン100℃の〈結成20周年記念企画第一弾〉として上演する『デカメロン21~或いは、男性の好きなスポーツ外伝~』がそれだ。その時々の自らのモードに時代の空気を重ねながら、表現の更新を続けてきた異才が、次はどちらに向かうのか。劇団員のみのすけ、松永玲子を交えて、KERAに話を訊いた。

KERAが「いろんなレパートリーを眺め回して、今またこれをやると面白いだろうなと思った」と称する作品は、2004年初演作『男性の好きなスポーツ』だ。その再演とは打ち出さず、タイトルも改めたのは、「どれだけ変わるか、やってみないことにはわからないから」。「たとえば前日に初演のDVDを観た人にもとっても、同じものを観た印象にならないようにしたい。極端な場合、いったん全部解体してモンティ・パイソンのようにコラージュするのもありだと思うし、別役実さんのような不条理感を出しても面白い。レビュー・ショーのようになる可能性だってあります」。

そのように要素還元しても変わらないのは、“セックス”にまつわるエピソードがいくつも描かれることと、笑いが重要な役割を果たすことだろう。8年前の初演時を振り返って、松永は言う。「“エロと笑いは共存できるか?”というところから作り始めたのを覚えています。で、それぞれ自分が最もエロいと思う映像を稽古場に持ち寄るという機会があって。私は映画の『卍(まんじ)』を選びました」。一方、みのすけは「蛍光灯だとベッドシーンは恥ずかしいので、ろうそくの灯りだけで稽古したんだよね。オープニングからエッチな言葉が飛び交う芝居なので、お客さんの反応が不安だったけど、実際はドンドン笑ってくれたので、うれしかった」と話す。

さらにKERAが言うには、「『男性の好きな~』は、パゾリーニが撮ったようなコメディチックでエッチなイタリア映画に触発されて発想したんだけど、作っているうちに谷崎潤一郎や川端康成、山田太一のテイストまで入ってきた。結果、スタンダードなエロ要素が出揃った感じはあったんだけど、今回はさらにその先に行けないかな、と。谷崎なんて本当はもっとヤバイからね。“変態大集合”的な匂いになるかもしれない」。

ほかに新谷真弓、村岡希美、喜安浩平ら劇団員と、内田滋、安藤聖、松本まりか、千葉哲也らゲスト陣を合わせた総勢30人のキャストで贈る。東京・CBGKシブゲキ!!で2月22日(金)から3月24日(日)まで上演。チケット発売中。