『相棒season11』の後半戦が始まった。新たな相棒として甲斐享(成宮寛貴)が登場し、杉下右京(水谷豊)とのコンビネーションは亀山薫(寺脇康文)や神戸尊(及川光博)の時とはまた違ったものになったが、元日スペシャルまでの平均視聴率は16.6%で、前作のseason10と変わらない支持を得ている(ビデオリサーチ社調べ・関東地区)。

それにしても、これだけタイプが違う相棒と組みながら、その基本的な姿勢は崩さず、しなやかに対応していく杉下右京というキャラクターの完成度は、改めてスゴイなと思う。そこで今回は、水谷豊という役者の歴史を振り返りながら、『相棒』の主人公・杉下右京がどのように作られていったのかを紐解いてみよう。

■主演デビュー作の役は狼男

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水谷豊が劇団ひまわりの出身で、10代の頃から役者をしていたことは、比較的よく知られていると思う。時々、懐かしのドラマを集めたような番組でも当時の映像が出てきたりするので、見たことがある人は多いかもしれない。そういう時によく使われるのが、1968年から69年にかけてフジテレビ系列で放送された『バンパイヤ』だ。その前にも『マグマ大使』にゲスト出演しているのだが、一応このドラマが水谷豊の主演デビュー作ということになっている。

『バンパイヤ』は手塚治虫の同名漫画を映像化したもので、実写とアニメを合成して作られた作品。水谷豊は、月の光を浴びると狼に変身してしまう、主人公のトッペイという役だった。内容的には、シェークスピアの「マクベス」をベースにした作品で、悪に導かれていく人々の姿や、変種に対する差別なども織り込んで描かれていた。ただ、連載されていた雑誌が途中で休刊になってしまったため、原作自体が未完となり、ドラマも終盤はやや無理な展開になっている。それでも、CGが無かった時代の変身シーンや、なにより若き日の水谷豊が見られるということで、見どころは多い。さらに、主人公のトッペイは、上京してアニメの制作会社で働くことになるのだが、そこが虫プロで、手塚治虫も本人役で出演している。それだけでも一見の価値がある作品だ。

『相棒』の杉下右京は、とにかく冷静で、理論的にものを考えるキャラクターだが、妙にオカルトや怪奇的な現象に興味を示したりすることもある。ちょっと意外な一面だが、そもそも水谷豊が本格的に役者の道をスタートさせた時の役は、月夜に変身する狼男だったのである。