年末年始は、例年、春に次いで携帯電話が多く売れる時期。各キャリアとも、冬モデルは高速データ通信に対応するスマートフォンを中心に投入してきた。2012年も、12月半ば以降、週を追うごとに販売台数は増加。ピークの12月第5週(2012年12月31日~2013年1月6日)には、「iPhone 5」発売直後の9月第3週(2012年9月17日~23日)の1.3倍にも達した。

家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2012年12月のスマートフォンの月間販売台数は、集計開始以来最も多かった12年3月に次ぐ水準。特に好調だったのは、Android搭載スマートフォンを主力に据えるドコモだった。スマートフォンの販売台数は前月の約1.7倍に拡大し、10月、11月は3割前後まで低下していたドコモのキャリア別シェアは、「iPhone 5」発売前とほぼ同じ水準の48.8%まで回復した。しかし、携帯電話全体の販売台数は前年比94.9%、スマートフォンに限っても前年比105.8%にとどまり、家電量販店が1年で最も賑わう「年末商戦の主役」としてはやや物足りない結果に終わった。今回は、恒例の月間ランキングとともに、2012年の年間ランキングを紹介しよう。

●スマートフォン率は3年間で2割から5割、そして7割へ

携帯電話全体の販売台数に占めるスマートフォンの割合(スマートフォン率)を年単位で集計すると、2010年は20.4%、2011年は50.7%、2012年は72.9%と、年を追うごとに上昇している。月次集計では、2012年11月に過去最高となる80.9%を記録(詳しくは<スマートフォンの構成比が8割を突破、「iPhone 5」と最新冬モデルのダブル効果>を参照)。従来型携帯電話がやや持ち直した12月は、若干下がって78.6%だった。「らくらくホン」や「簡単ケータイ」など、シニア向け端末を中心に従来型携帯電話も売れており、スマートフォン率はしばらく8割前後で落ち着きそうだ。

●年末商戦の12月、機種別ではドコモの新「AQUOS PHONE ZETA」がトップ

まずは月間ランキングからみていこう。SIMフリー端末を含む携帯電話全体の2012年12月の販売台数1位は、ドコモのシャープ製スマートフォン「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」だった。新世代ディスプレイ「IGZO(イグゾー)」をはじめ、さまざまな省エネ技術・技術を搭載し、約4.9インチの大画面ながらスマートフォンの弱点といわれる「バッテリのもち」を劇的に改善したという。

週次集計では、発売日を含む11月第4週(2012年11月26日~12月2日)から直近の2013年1月第1週(2013年1月7日~13日)まで7週連続で1位を獲得。ドコモの冬モデルのなかでは、ソニーモバイルコミュニケーションズ製の「Xperia AX SO-01E」と人気を二分している。

容量の異なる「iPhone 5」をキャリアごとに合算すると、1位はソフトバンクモバイルの「iPhone 5」(15.1%)、2位はauの「iPhone 5」(13.5%)となり、シェア7.4%の「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」は実質的には3位になる。2キャリア販売分を合算すると、「iPhone 5」は、2012年9月、10月、11月、そして12月と、4か月連続でトップを獲得。ただし販売台数は11月をピークに減少に転じ、10月・11月には4割近くあったシェアも、12月は28.5%に下がり、3割を切ってしまった。他の機種に比べると販売台数は圧倒的に多いが、早くも次期モデルや廉価版の噂が出ており、買い控えの発生が懸念される。これまでのように、長期間にわたって売れ続けるロングセラーとなるか、先行きはやや不透明だ。

●ドコモ、auは、11~12月発売の冬モデルが上位にランクイン

続いて、主要3キャリア、ドコモ・au・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、iPhone 5/4Sについては、最初から容量を合算して1機種としてカウントしている。

ドコモは、11月29日発売の「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」が初めて1位を獲得。3位には11月28日発売の「ARROWS V F-04E」、7位には11月3日発売の従来型携帯電話「P-01E」、6位に12月14日発売の「Disney mobile on docomo N-03E」がランクインした。なお、「BCNランキング」では、「Disney mobile on docomo」ブランドの端末はドコモとして、「Disney mobile on Softbank」の端末はソフトバンクモバイルに含めず、独立した別キャリア「Disney mobile」としてカウントしている。

auは、前月同様「iPhone 5」がトップ。2位には、約5インチのフルHD液晶を搭載するなど、高いスペックを備え、発表時から評判の高かった「HTC J butterfly HTL21」が入った。ただ、全カラー・全国一斉発売ではなく、地域やカラーによって発売日がずれたために、携帯電話全体では13位にとどまっている。

ソフトバンクモバイルは、「iPhone 5」がシェア約6割を占め、前機種「iPhone 4S」も2位につけている。前月とトップ10はほとんど同じだが、世界最多の25色のカラーバリエーションを揃えた12月21日発売のAndroid搭載スマートフォン「PANTONE 6 SoftBank 200SH」が4位にランクイン。カラフルなPANTONEシリーズは、iPhoneと並ぶソフトバンクモバイルの定番といっていいだろう。

●2012年に一番売れた携帯電話は「iPhone 4S」、「iPhone 5」は追い抜けず

最後に、2012年の携帯電話ランキングを紹介しよう。なお、集計期間の関係上、すでに販売を終了しているモデルも多い。あらかじめご了承いただきたい。

携帯電話全体の2012年の年間販売台数1位は、シェア4.7%でソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」の16GBモデルだった。2位はauの「iPhone 4S」の16GBモデル(3.1%)、3位はドコモの「Xperia acro HD SO-03D」(3.0%)で、iPhone 5/4S/4についてキャリアごとに容量を合算すると、ソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」、auの「iPhone 4S」、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」、auの「iPhone 5」、ドコモの「Xperia acro HD SO-03D」の順となった。上位20位以内には、「N-03D」など、従来型携帯電話も7機種ランクインしている。また、iPhoneシリーズすべてを合算するとシェアは23.3%となり、ほぼ2割を占めた。もちろんダントツのトップだ。

発売以来の累計販売台数は、今のところ「iPhone 5」より「iPhone 4S」のほうが多く、日本で最も売れたスマートフォンは「iPhone 4S」のまま。今のペースだと、「iPhone 5」が「iPhone 4S」を追い抜くまで、まだしばらく日数がかかる見込みで、もしモデルチェンジの間隔が短縮されると、「iPhone 4S」の記録がずっと残ることになるだろう。アップルのiPhoneシリーズの独走を崩す最有力候補は、どのメーカーのどのブランドの端末か。2012年冬モデルの実績から、個人的に、今年は「AQUOS PHONE」シリーズなどを展開するシャープと「Xperia」シリーズのソニーモバイルコミュニケーションズに注目したい。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

・2012年のスマートフォンの年間メーカー別販売台数シェアについて

1月8日に掲載した<2012年の携帯電話・PCの動向を振り返る――タブレットがデスクトップPCを超える>、1月11日に掲載した<「BCN AWARD 2013」の受賞社が決定、「スマートフォン」はアップル、「ノートPC」はNECが2年連続で受賞>(1位のみ)をご覧ください。