堤真一

CBC制作のドキュメンタリー番組「堤真一 ヒマラヤ巡礼〜山で神様に逢いたくて〜」で、俳優の堤真一が念願のエベレストを旅した。元々、神社や仏閣を訪ねることが趣味という堤。エベレストの山麓や神々が暮らすというネパールで得た“旅の収穫”について尋ねた。

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そもそも堤が世界最高峰のエベレスト(8,848メートル)に憧憬を抱いた理由は、エベレスト登頂を主題にした夢枕獏氏の小説『神々の山嶺(いただき)』との出会い、そして、友人夫婦に聞いたヒマラヤ山脈の麓で眺めた満天の星空にあった。今回の旅の、第一の目的だ。「星空が美しいと聞いていたので、トレッキングしてエベレストの行ける所まで行って景色を見てみたいと思いましたね」。しかし、単なる観光ではない。「神という存在にも興味がありました」と続ける。「日本にも神社仏閣があって、信仰がないわけじゃないですが、皆彼らほど絶対的な信仰心ではないですよね。その感覚を直接行って知りたかったわけで」。

旅の始まりは、ネパールの首都カトマンズ。世界遺産で有名な釈迦が生まれた仏教発祥の地ルンビニを訪ね、日本人として初めて単身チベットを目指した僧侶・河口慧海(えかい)の足跡も追って、ヒマラヤ山脈奥深くのマルファ村へ。山で神様に逢おうとした堤は、「たとえばヒンドゥー教は日本の神道に似ていて、なじみやすかったですね」と成果を報告する。「いろいろなキャラクターがいて、今はこの神が一番人気みたいなって感じでびっくりして(笑)。日本にも天照大神、スサノオノミコトなどを祀っている神社がたくさんありますが、その土地に根付いた価値観は環境によって全然違う。それを再確認しましたね」。

今回のヒマラヤ巡礼で堤が確信したことのひとつは、まさしく土地や環境によって異なる価値観の“差”だった。「山そのものが神、自然信仰です。そこが全然違います。その差を知った時、正しくて当然と日常で思っていることが、実は何かの押しつけじゃないかと、思うことってあるじゃないですか。その疑問に、感覚的な答えを見たような気がします」と“旅の収穫”について満足気に回想する堤。「観てくだされば、絶対に行ってみたいと思うはずですよ」という今回の地球大紀行スペシャル。それぞれの心に迫る感動があるはずだ。

「堤真一 ヒマラヤ巡礼〜山で神様に逢いたくて〜」

取材・文・写真:鴇田 崇