(左から)中村義洋監督、濱田岳

『アヒルと鴨のコインロッカー』(’07)、『ゴールデンスランバー』(’10)などのヒット作で知られる中村義洋監督の新作『みなさん、さようなら』は、若手演技派の濱田岳が、12歳のときに「一生、団地の中だけで生きていく」と決める主人公に扮したハートフル・ムービー。濱田の中村作品への出演はこれが5作目。公開を前に息もぴったりのふたりのインタビューが実現した。

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本作でまず最初にビックリするのは、主人公の12歳から30歳までを濱田がすべてひとりで演じていることだ。これに関して中村監督は「小学校時代は最後の学年しか描かないと決めた時点で、岳ですべて行こうということになって。岳が実際に15歳のときに出た“金八先生”や17歳のときの“アヒルと鴨”をメイク部と一緒に観て、23歳の現在と骨格がどう変わったのかを研究し、子供時代は目張りなどで目が大きく見えるようにしましたね」と語る。それに対して浜田は「12歳を意識し過ぎると小学生コントになっちゃうから、最初はどうしようかと思いましたよ」と複雑な表情を見せる。「でも、お母さん役の大塚寧々さんが“岳ちゃんより老けた小学生を見たことあるし、可愛いから大丈夫”って言ってくれて、その母性に助けられて演じることができました(笑)」。

濱田は本作で波瑠、倉科カナを相手にラブ・シーンにも初挑戦し、「カメラの前で初めて女性に触りました(笑)。素で緊張してましたね」と苦笑する。「今回はほかにもケーキ作りのキットを家に持ち帰って自主練したり、空手の型を繰り返し練習したり。でも、台本に1本指で腕立て伏せって書いてあるのを見たときは“どういうことですか?”って監督にメールしました。2本まではできるけど、1本になると筋肉ではなく、骨の堅さの問題なんですよ(笑)」。

そんな濱田を見つめながら、中村監督は「岳といると毎日が楽しいんですよ」と嬉しそうだ。「もともと岳の持っているものに惚れているところがあるし、岳はこのセリフをどんなふうに言うんだろう? おっ、そうきたか? みたいな感じでやっているからね」。濱田が続ける。「だから最近は演出が“違うよ”だけになって。“やって”って言われるだけだから、もうやっちゃえ! って感じなんですよ(笑)」。この阿吽の呼吸が映画を魅力的なものにしているのだ。

『みなさん、さようなら』

取材・文:イソガイ マサト