■漫画誌の活路はウェブコミック?

このように長寿の漫画誌はとことん長寿なのに対し、新創刊されてすぐに消えていく雑誌も近年特に目立つようになってきた。少年ジャンプ黄金期をリアルタイムで体験し、月曜発売のジャンプを前週土曜にゲットしていればクラスのちょっとしたヒーローになれた時代(歳がバレるなぁ)を知る記者にとっては少々寂しい時代だ。

漫画誌の苦境は統計データなどにも表れている。出版業界自体がそもそも不況なのに加え、2005年からは販売金額が単行本>漫画雑誌という状態が続いている。『ONE PIECE』が単行本の発行を300万、400万部と伸ばしてるのに対し、掲載誌(少年ジャンプ)の発行部数がピーク時の半分以下なのを考えてもらえれば分かりやすい。あちこちの業界関係者からも「雑誌単体では利益が出ない。単行本が売れないといけない」という声がよく聞かれる。先述した短命漫画誌がすべて2005年以降の創刊だったのも偶然ではあるまい。

そんな状況を踏まえてか、各出版社とも電子媒体――ウェブコンテンツの拡充が目立つ。少年ジャンプはマンガオンライン、少年マガジンはマガメガ、少年サンデーはWEBサンデーやクラブサンデーを用意し、情報と作品の配信を積極的に行なっている。

ただ単に本誌連載作品をデジタル化しただけでなく、“ウェブオリジナル”の良作・人気作が増えてきたこともファンには嬉しい。たとえばスクウェア・エニックスの無料ウェブ漫画誌「ガンガンONLINE」からは、『男子高校生の日常』が2012年にアニメ化。立て続けに『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』のアニメ化も発表され、それぞれ単行本は累計200万部と100万部の大ヒットを記録している。また、集英社の「となりのヤングジャンプ」も『ねこぐるい美奈子さん』や『ワンパンマン』など話題作が連載中。もはや一時期のように“ウェブは本誌でアンケート順位が低い作品の島流し場”とは感じられなくなった。

出版社にとっては、紙の雑誌を作って赤字になるんだったら低コストなインターネットでプロモーションしても同じという考え方なのかもしれない。どのみちウェブコンテンツ拡充によってパソコンやタブレット、スマホで気軽に漫画が読めるのは大歓迎だし、気に入った作品が見つかれば単行本が出ているからコレクションも容易。まだ違法コピー対策、ウェブ時代における漫画家の権利保護など、各社とも手探り段階かもしれないが、このまま紙媒体の雑誌が売れないからといって“漫画の歴史”は絶やしてほしくない。漫画ファンの一人として、今後のさらなる取り組みに期待したいところだ。

【関連リンク】
マンガオンライン 集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト
マガメガ 週刊少年マガジン
WEBサンデー
クラブサンデー
ガンガンONLINE
となりのヤングジャンプ

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。