『世界にひとつのプレイブック』を手がけたデヴィッド・O・ラッセル監督(C)2012 SLPTWC Films,LLC. All Rights Reserved.

2月22日(金)から日本公開になる映画『世界にひとつのプレイブック』が本年度の米アカデミー賞で8部門にノミネート、ゴールデン・グローブ賞では主演女優賞に輝くなど快進撃を続けている。少しイカレた男女が偶然に出会い、再起をとげる過程をロマンティックに描いた作品だが、本作が誕生する道のりも、偶然に偶然が重なった“奇跡”のような瞬間がいくつもあったようだ。

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映画のタイトルになっている“プレイブック”とは、アメリカンフットボールでそれぞれのチームがつくる“作戦図”のこと。本作は、妻の浮気をきっかけに家も仕事も失い、自身の怒りを抑えられなくなってしまった元教師のパットが、同じように心に問題を抱えた女性ティファニーと出会い、周囲の人々を巻き込みながら再起の道を疾走する感動作だ。

本作の原作はマシュー・クイックの同名小説。この小説をいたく気に入り、原作権を取得したのがオスカー監督のシドニー・ポラックとアンソニー・ミンゲラだった。ふたりは『スリー・キングス』や『ハッカビーズ』を手がけてきたデヴィッド・O・ラッセル監督に小説を読むように説得する。ラッセル監督は「この物語には親近感を感じます。私にも躁うつ症の息子がいるので、シドニー・ポラックとアンソニー・ミンゲラから小説をもらった時、読んですぐに何かつながりがあると感じました。私も、みなさんと同じように、感情的で、問題を乗り越えようともがく家族が好きです。そういう家族は真剣だからこそ、おもしろいんです」と語る。

ラッセル監督は躁うつ症の息子と向き合う父親だが、自身もかつては撮影現場で怒りが抑えられなくなり、俳優たちと度々モメてきた。大事なことは、ラッセル監督が登場人物たちが抱えている問題を身近なものとして感じているのと同時に、この問題に立ち向かう人たちを“おもしろい”と感じていることだ。「この映画の登場人物はフィルターがかかっていないから、本当のことを語る。ときには残酷で平坦ではないが、ときに美しくもある。彼らの生き様を見るのは間違いなくおもしろい」。

だからこそ、ラッセル監督は困難があっても、この小説を自分で映画化することを諦めなかった。資金のめどが立たず苦労したが、先に『ファイター』を手がけて高い評価を獲得したことで、本作の製作は加速。主演俳優が決まらずにいた時には先に出演が決まっていたロバート・デ・ニーロがブラッドリー・クーパーを連れてくるなど幸運も重なった。そして映画は無事に完成し、興行的にも大成功。本年度の米アカデミー賞では唯一、主要部門すべての候補になるなど高い評価を集めている。

『世界にひとつのプレイブック』
2月22日(金) TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開