自己資金と頭金は違います

では、マイホーム購入に必要な諸費用やその他費用が分かったところで、次は「自己資金」と「頭金」についてです。

不動産会社によっては「自己資金はいくらですか?」と聞いてくるところもあれば「頭金はいくらですか?」と聞いてくるところもあります。

どちらも同じではないかと思う人は多いでしょうが、「自己資金」=「頭金」ではありません

自己資金とは「貯金-手元に残すお金(先程の例では180万円の生活費)」であり、頭金とは「自己資金-(諸費用+その他費用)」です。

貯金から諸費用やその他費用を引いた残りを「頭金」と考えてしまうと、新生活に困ってしまいますから、余裕を持った資金計画が必要ですね。

頭金ゼロ VS 300万円 どちらがお得?

そもそも頭金は準備する必要があるのか、フルローンで購入は危険なのか疑問に思っている人は多いですね。

多くの住宅ローンの借入額が、物件価格の8~9割である場合が多いことから、頭金は物件価格の1~2割が必要だと言われております。

しかし頭金なしでフルローンが組めることもある(例:フラット35と銀行ローンを組み合わせる)ことから、どうせ買うなら頭金なしですぐに買ってしまう人もいれば、数年掛けて頭金を作り、それから買う人もいます。

では、どちらが最終的にお得になるのでしょうか。物件価格3,000万円、固定金利1.3%、借入期間35年という条件のもと、頭金ゼロで即時に購入する場合と、5年かけて賃貸(家賃月10万円)に住みながら頭金300万円を準備し購入する場合とで比べてみました。

固定金利1.3% 35年 3,000万円借りた場合

  • 毎月の返済額:約8.9万円
  • 総返済額:約3,736万円

固定金利1.3% 35年 2,700万円借りた場合

  • 毎月の返済額:約8.1万円
  • 総返済額:約3,363万

※5年後も金利は同じで計算しています。
※フラット35で借入を起こした場合のシミュレーションです。
※金利情勢や税制面の影響は考慮しないものとします。

ここまで見てみると、月々の返済額に大差はないものの、総返済額については370万円ほどの差が出ることが分かります。

当たり前ですね。借入金額は少ない方が毎月の返済額も少なくなり、総返済額も少なくなります。ですから、頭金はあった方が良いという結果になりますが、考慮しなければならないのが、5年掛けて頭金を貯めている間は家賃が掛かるということです。

家賃10万円で5年間払い続けると600万円 になりますから、この600万円も考えなくてはなりません。

では、「総必要額」として考えた場合、どちらがお得になるのでしょうか。

頭金なしの即時購入の場合は総返済額と同じ約3,736万円になりますが、5年掛けて頭金300万円で2,700万円を借り入れた場合、総返済額以外に頭金の300万円と5年分の家賃600万円が掛りますから、3,363万+300万円+600万円で、約4,263万円になります。

総必要額で比べると、「約3,736万円」と「約4,263万円」ですから、520万円ほど頭金なしの即時購入の方がお得になってしまいます。

「総返済額」で比べるのと「総必要額」で比べるのとでは、考え方により違いが出てくるということです。

これはあくまでも、金利情勢や税制面の影響などは考慮されておりませんから、一概には言えませんが、現在のような低金利など、条件が揃うことにより逆転することもありますから参考にしてみてください。

まとめ

「マイホーム購入には頭金が必要だ」などといった固定概念にとらわれていると、結果的に損をする可能性もありますから、購入の際は不動産会社に綿密な資金計画のシミュレーションを出してもらい、場合によってはFPなどに相談すると良いでしょう。

いつかは持ち家」ならばそれは「いつ」なのか。その判断が将来の家計を左右する重要なポイントとなりますから、慎重に計画したいですね。

子育て世代が損をすることなく、無理のない範囲で満足のいく住宅購入ができることをお祈りいたしております。

<参照>ハイアス・アンド・カンパニー株式会社「約9割がマイホーム取得に不安、主な理由は住宅購入資金関連 「返せる計画」の重要性は認識するも、収入に注目しがちで支出を意識せず

ライター。不動産会社に10年ほど在籍し、賃貸営業、賃貸事務、売買仲介、売買仲介事務、不動産管理営業、不動産管理事務など幅広く経験。現在も不動産会社で勤務しており、おもに賃貸仲介をメインで活動中。好きな言葉は、「根拠のない自信はおおいに結構。それを裏づける努力をするべし」。二児の母でもある。