『アウトロー』の原作者リー・チャイルド

トム・クルーズが主演の映画『アウトロー』が本日から日本公開されている。本作の主人公は放浪の旅を続けるジャック・リーチャーで、彼を主人公にしたシリーズも人気を博している。そこで作者のリー・チャイルドに国際電話を通じてインタビューを行い、小説の読者をそして映画の観客を魅了し続ける謎の男“ジャック・リーチャー”について話を聞いた。

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リーチャーは元軍のエリート捜査官で、圧倒的な身体能力と鋭い観察眼を持つ男だ。彼は一匹狼で、決して人とは群れず、職もなく、友達も家族もおらず、携帯電話やクレジットカードすら持たない男だ。映画は、そんな彼がピッツバーグで起こった連続殺害事件の背後に隠された恐るべき真相に迫る。

作者のチャイルドは英国出身の作家で、TVの世界で活躍した後に執筆活動に入り、小説『キリング・フロアー』でリーチャーを登場させる。映画は9冊目が原作になっているがシリーズはすでに17冊が出版され、熱狂的なファンも多い。それだけにチャイルドは「自分の作品を誰かに預けることは、自分の娘を嫁に出すようなものだよ。相手を信用できないと無理だと思った」と振り返る。そんな彼が原作を預けたのは、脚本家でもあるクリストファー・マッカリー監督とトム・クルーズだ。「リーチャーの“内面”を描きだせる俳優でなければならないと思っていたけど、その点でトムは完璧な俳優だった。僕もかつてはTVの世界にいたから色んな脚本を読んできたけど、クリストファーが書いた脚本はこれまでで最も素晴らしいものだったから安心してまかせることができたよ」。

リーチャーが極端なルールを自らに課しているのは“自由”を追求し続けているからだ。「彼の中に米国人的な自由に対する執着を見出す人もいるかもしれないけど、私はもっと普遍的なものだと考えているんだ。例えば、日本には“浪人”の伝説があるだろ? どの国や社会にもそのような伝説があり、それは私たちが自由を求める気持ちの表れだと思う」。もちろん、チャイルドは中世の放浪者と現代を生きる流れ者を同じだとは考えていない。道路に無数の監視カメラがあり、携帯電話やクレジットカードを使えばサーバーに履歴が残る社会で“アウトロー”でい続けることは困難を極めるからだ。「現代の社会で身を隠すことは本当に難しい。だからこそ、彼のような人物を描くことで読者に『なぜ彼はあんなことをするのだろうか?』と考えてもらいたかったんだ。彼は“孤独な人間”ではなく、“孤独になることを求めている人間”だ。と同時に彼は『ずっと、孤独なままではいけないのでは?』と考えたりもするんだ。そのせめぎあいがリーチャーを面白くしているし、その点は映画でもしっかりと描かれていると思うよ」。

『アウトロー』
2月1日(金) 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー