寺社の歴史や信仰を背景にした日本の心、文化を体感できる「宿坊」の全国ガイド。一般の宿泊施設にはない宿坊の魅力や、利用する前にチェックしておきたいことなどもまとめました。

宿坊を利用する前にここをチェック!―宿坊の歴史

そもそも宿坊とは、寺社やその近隣にもうけられた僧侶や参拝者のための宿泊施設だ。そのはじまりは平安時代といわれ、当初は寺院が僧侶に宿を提供していたのが、時代とともに貴族や武士、やがて一般の参詣者、観光客へと門戸が開かれていったらしい。

江戸時代には、お伊勢参りや善光寺詣でが大人気に。「遠くとも一度は詣でたい」という人々の憧れを反映し、各地の大寺社では宿坊が整備され、ある種観光事業を形成するようになった。現在ある宿坊はそうした文化を守り続け、今に伝えてくれる場所なのだ。

宿坊の運営元と特徴

宿坊は大きく寺院系と神社系に分けられ、前者の運営は主に僧侶、後者は神職が中心となる。寺院の宿坊に仏殿や仏壇がありお勤めが行われるのに対し、神社の宿坊には神殿があり、祈祷などが行われる。供される食事も、前者は精進料理で、後者では土地の名物である海の幸などが加わることも。

なお、一般の宿泊施設に近い感覚で利用できる宿坊だが、そこは宗教施設。仏さまや神さま、行われる行事に対する敬意は忘れないようにしよう。とはいえ、無宗教であったり宗派が違うという人の利用も、常識的なマナーを守ればまず問題ないはずだ。ただ、滞在をより充実したものにするために、また宿坊に対する礼儀としても、次で紹介する運営に関わる寺社についての基本的な知識はあらかじめ知っておきたい。

宿泊に際しての条件・ルール

宿坊が宗教施設であるといっても、さほど厳しい決まりごとはない。しかし個々に条件やルールがあったりするので利用前にはそちらも押さえておこう。

まず、宿泊可能人数。マイペースで行動できる1人旅が好きな人も多いだろうが、宿泊は複数の人数からという宿坊もある。ごく一部には、利用できるのは宗派に属する僧侶・信徒のみという宿坊も。そうした場合、所属寺院発行の証書を有していることなどが宿泊条件となっている。

また、門限やお風呂、食事の時間も守らなければいけない大切なルール。ほかにも、宿坊では自ずと周りの宿泊者を意識した行動が求められる。お隣とふすまを隔てただけの部屋も少なくない宿坊では、夜更かしはほかの宿泊者への迷惑。早起きしてふだんは味わえない爽やかな朝を満喫するためにも早めに就寝しよう。

なお、宿坊での貴重な経験のひとつである朝のお勤めやご祈祷など。これは宿泊者の任意参加であることが多いが、なかには宿泊の条件としているところも。近年は日本文化を味わえることで外国人にも人気の高い宿坊。朝のお勤めなどの参加が必要な否かは、異なる信仰をもつ海外の友人を連れていきたいという場合には特に注意したい。