古典部のメンバー、福部里志を演じた岡山天音

 累計230万部を超える米澤穂信氏の学園ミステリー『古典部』シリーズの第1弾を実写映画化した『氷菓』が、11月3日から全国公開される。高校の古典部に入部した省エネ主義の天才探偵・折木奉太郎(山崎賢人)、謎解きが大好物のお嬢様・千反田える(広瀬アリス)たち個性的な4人が、学内で起きるさまざまな謎に挑んでいく物語。豊富な知識で謎解きをサポートする古典部のメンバー、福部里志を演じた岡山天音が、プライベートでも親友同士である山崎と共演した感想や作品の舞台裏を語った。

-出演が決まった時の気持ちをお聞かせ下さい。

 めちゃくちゃうれしかったです。最初、(山崎)賢人から聞いたんです。夜、電話が掛かってきて「今度、一緒にやるの決まったよ」って。すごく舞い上がったのを覚えています。賢人とは10代の頃からずっと友達なので、電話を切った後、あまりにうれしくて大声で叫んじゃいました(笑)。

-最初に台本を読んだ時の感想は?

 難しいなと感じました。里志は高校1年生という設定ですが、達観したキャラクターなので、実際に演じる時、どうバランスを取ったらいいのか…。また、せりふや掛け合いで進んでいくミステリーというものをどう演じていったらより良い形になるのかなど、考えることが多かったです。

-福部里志というキャラクターの魅力は、どんなところでしょうか。

 人間くさいところです。今回の映画では、いつもニコニコしていて、人当たりがよくて、要領もいいといった印象ですが、原作ではシリーズが進むにつれ、実は奉太郎にコンプレックスを感じていたことが明らかになっていくんです。天才の奉太郎に対して、横にいる里志がどう感じていたのか…。僕もこの業界にいて、奉太郎のように、持って生まれたものが違うなと感じる人にたくさん出会いました。だから、里志の気持ちがよく分かるんです。そう考えたら、切なくてほっとけなくなりました。そういう部分に引かれたので、映画で描かれる、描かれないにかかわらず、そこは大事に演じたいと考えました。

-撮影に入る前、古典部のメンバーを演じる山崎さん、広瀬アリスさん、小島藤子さんと一緒にリハーサルをされたそうですね。

 恥ずかしかったですね。僕、リハーサルって苦手なんです。メークも衣装も無しで、会議室みたいなところで周りの視線を感じながらお芝居をするのは集中できなくて…。ただ、いろいろと超えなきゃいけないものがある役だなということは、リハーサルを通じて分かってきました。監督とは、原作で「常に笑っている」と書かれている里志を、現実的にどう成り立たせるかということも相談しました。

-親友の山崎さんと共演した感想は?

 笑っちゃいました(笑)。今までも現場が一緒になったことはあるんですが、一緒に芝居をしたことはなかったんです。それから何年かたって、いざ親友役をやるとなったら、なんだか不思議な感じで…。衣装合わせの時も、僕が部屋に入ったら、先にいた賢人と目が合ったんですけど、お互いにどんな顔をしていいのか分からず、しばらく見合った後、目をそらされたり…(笑)。昨日は普通に話していたのに…みたいな照れくささが、最初はありました。ただ、撮影に入ってからは、ホテルで賢人と読み合わせをして、「奉太郎的にはどう?」なんて相談もできたので、ずいぶん助けられました。

-現場での山崎さんの印象はいかがでしたか。

 やっぱりすごいですよね。賢人がどういう場所で戦っているのかというのを今回近くで見たのですが、主演ばかりやっていてよくうまくバランスを取れるなと思います。でも、賢人は街で人に気付かれるようになっても、根っこは全然変わらないんです。すごくフラット。スタッフさんたちに対しても、ちゃんと自分の方から近付いていって信頼関係を築ける。そういうところがすごく魅力的だと改めて感じました。

-岡山さんも朝ドラの「ひよっこ」などで活躍されていますし、街で声を掛けられる機会も増えたのでは?

 いや、全然ですよ。もっと頑張ります(笑)。

-とはいえ、いろいろな作品で拝見する岡山さんのお芝居は十分魅力的です。普段、演じる上で心掛けていることはなんでしょうか。

 役や作品によって変わりますが、ベースにあるのは、見ている人に、自分と同じ世界に生きている人だと認識してもらえるようにしたいということです。どこかにこんな人がいるんじゃないか…そんなふうに感じてもらえるように演じたいと思っています。

-この作品のように学園ものに出演される機会は多いと思いますが、作品ごとに演じ分けることは意識していますか。

 多少は意識しますが、それは作品よりも役に負う部分が大きいです。似ているように見えても同じ人間はいませんから、台本を読んで掘り下げていけば、取っ掛かりは見つかります。例えば、この人はどういう経歴をたどってこの台本に描かれているところまで到達したのか…。そんなことを考えると、例えば、今まで人と会っていい思いをしてきたのか、痛い目に遭ってきたのか、みたいな違いが見えてくるんです。そうすると必然的に、しゃべっている時に人とどのぐらい目を合わせるかといったことも変わってくるので、そういうところから埋めていく感じです。

-今回の里志も同様に?

 そうですね。ただ、今回は原作がシリーズになっていて、過去の話などもいろいろ出てくるので、アプローチとしてはやや特殊だったかもしれません。

-岡山さんが考えるこの映画の見どころは?

 やっぱり、プライベートでも仲がいい賢人の親友役をやっているところです。そういう距離感の中から、自分たちが意図していないところで画面に映ったものもあると思うので、そこは楽しみにしてほしいです。原作ファンの方たちのこともきちんと考えて作ったので、気に入ってもらえるとうれしいですね。

(取材・文・写真/井上健一)

※山崎賢人の崎は「たつさき」が正式表記

『氷菓』11月3日(金)全国公開
配給:KADOKAWA

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