『ゼロ・ダーク・サーティ』を手がけたキャスリン・ビグロー監督Jonathan Olley(C)2012 CTMG. All rights reserved

アメリカ同時多発テロ事件の首謀者ウサマ・ビン・ラディン殺害の真実を描く映画『ゼロ・ダーク・サーティ』が15日(金)から日本公開される前に、本作を手がけたキャスリン・ビグロー監督と脚本家のマーク・ボールのコメントが届いた。

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本作は、アメリカ同時多発テロ事件の首謀者とされるウサマ・ビン・ラディンの居場所を突き止め、追いつめ、殺害するCIAの隠密作戦の真実を、ひとりの若き分析官の女性の苦悩を主軸に描いている。ふたりは前作『ハート・ロッカー』でイラクで危険物処理班として活動する男たちの姿を描き、第82回アカデミー賞で6部門を受賞したが、『ゼロ・ダーク…』はそれ以前から企画開発が進められていたという。ビグロー監督が「同じことに興味と関心があるから、いいコンビネーションを生んでいるのだと思います」という脚本家のボールは、かつてはノンフィクション作家として活動しており、本作でも「関係者に電話をして、企画を説明した。実際に作戦に関わった関係者たちの話を聞けたのはとても運がよかった。だから、この映画は彼らの機密情報に関する話が反映されている。10年間の実際の歴史を知ってもらえると思う」という。

そこで、彼らは細部まで調べあげた膨大なデータと証言を158分のドラマに凝縮した。ビグロー監督は「オサマ・ビンラディンの追跡そのものが、10年の月日がかかったドラマチックな物語で、娯楽性に富んでいますから、それを素晴らしいキャストでリアルに映画化することに集中しました」と言い、ボールは「観客はまずCIA職員とはどんな仕事なのかを知り、物語が進んでいくにつれ、様々な場面を主人公と一緒に経験します。主人公と共に、最後まで犯人を追いつめ捜査していくストーリーです。その点で観客は物語に入り込みやすいと思います」という。

もちろん、彼らが目指すものは、実際に起こった痛ましい事件を単なる“娯楽”にすることではない。ボールは「これは歴史映画だから、事実を忠実に描きたかった」としながらも「この映画は観る人によって感じるものが異なることはわかっている。できれば、僕たちが被害者の方々に敬意を示していて、人々があの事件を忘れないことを願って作った映画だということを理解してもらえるとうれしい」と語る。確かに劇中に登場するいくつかの場面は、とてもショッキングで、観ていて心地の良い気分になる場面ではない。しかし、報道カメラが捉えることができなかった場面を、入念な調査を重ねてスクリーンに描いた本作は、多くの人々の関心を集め、事件に関する思索をさらに促すことになるのではないだろうか。

『ゼロ・ダーク・サーティ』
2月15日(金) TOHOシネマズ有楽座ほか全国公開