(左から)石井裕也監督、松田龍平

アップルストア銀座にて定期的に開催されている、映像作家の生の声を聞くイベント「Meet The Filmmaker」に映画『舟を編む』主演の松田龍平と石井裕也監督が来場。撮影中の秘話や互いの印象などについてたっぷりと語り合った。

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コミュニケーション能力は著しく低いものの言葉に対する熱い思いを秘める出版社社員・馬締光也を中心に、15年もの歳月を費やして辞書の編纂に執念を燃やす人々の悲喜こもごもを描き出す。

松田と石井監督は同い年ということもあり、忌憚なく意見を言い合えるからこそ苦労した部分も多かったよう。松田は「同い年だからというか…石井さんに難ありと言いますか(苦笑)」と微妙に言葉を濁しつつも石井監督との共同作業を明かす。「楽しくもあり大変でもありました。演じる上で、僕からの発信で僕だけで終わってしまうとスケールが小さくなってしまう。石井さんが演出してくれることで広がって、役に立体感が出たと思う。脚本をすごく読んでいて、イメージもしっかりしてるから『なんとなく』というのでは勝てないんです。きちんと言葉にするというのは新鮮でした」と振り返った。

本で埋め尽くされた辞書編集部や馬締が暮らす古い下宿「早雲荘」の美術は細部に至るまで工夫が凝らされており、雑然とした中に目を見張る美しさがある。3万5千冊もの本が使用されたというが、石井監督は美術スタッフの優秀さを称え「本がいっぱいある風景には人間味や温かさがある」と胸を張る。普段「セットがあまり好きではない」という松田。その理由を「一歩外に出るとスタジオで、ウソが見えてしまい、ウソの中でウソをやっているような気持ちになるから」と説明するが、今回はウソの感じられないセットに感銘し、大いに助けられたよう。「(セットということを)忘れるくらいよくできていました。早雲荘の床を歩くと本当にきしむんです」と称賛をおくった。

松田は現在放送中の連続ドラマ「まほろ駅前番外地」に出演しており、その前の映画『まほろ駅前多田便利軒』、そして本作と立て続けに三浦しをん作品の実写作品に出演。これについては「ありがたい」と言いつつも、「顔色をうかがっちゃうところはありますよ、大丈夫かな? って。責任があるので」とも。多くの原作ファンを抱える作品への出演にプレッシャーがないわけではないが、「でも『これはキャスティング違うな』とか言いながら観てもらえたら楽しめるかなと思います。本では出せないダイレクトな映像の面白さがあると思います」と独特の言い回しで作品をアピールしていた。

『舟を編む』
4月13日(土)丸の内ピカデリーほか全国公開

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