左から、大槻裕一、姿月あさと 左から、大槻裕一、姿月あさと

大阪生まれで同志社大学文学部に在学中、9月に20歳になったばかりの観世流能楽師・大槻裕一。文字を書くより先に謡(うたい)を謡っていて、初舞台は2歳。中学3年生の時にシテ方観世流能楽師で人間国宝の大槻文蔵の芸養子となり、グングン成長して、今や若手の注目株だ。師父・文蔵と「大槻文蔵裕一の会」を主催し、2014年には移動式能舞台を大阪城の本丸に設置、天守閣をバックに薪能も企画した。15年に続き、今年も10月7日(土)~9日(月・祝)に二十六世観世宗家の当代・観世清和や狂言師・野村萬斎らを迎えて開催。能の未来を切り拓き、広く一般に親しんでもらえるよう果敢に挑戦する若き能楽師が、大槻能楽堂でまた新たなイベントをスタートさせる。それが『能×アート 奇跡のセッションシリーズVOL.1 BORDERLESS』。第1回目のゲストには、元宝塚歌劇団宙組初代トップスター・姿月あさとを迎える。ふたりの思いを聞いた。

「BORDERLESS」チケット情報

「2歳からずっと能だけをやってきて、ほかの分野の方や自分とは違う一芸を極めている方とセッションしてみたいと思っていたんです。能楽堂のステキな空間を生かしながら、芸の世界で生きる辛いことや楽しいことのお話ができればと。お客様にも知っていただき、またこの企画によって、自分が新たに能を再確認することの意味も大きいと思っています」と裕一。彼は、母親がファンだった姿月の宝塚現役時代のDVD『ミーアンドマイガール』を見て「その時のかっこ良かった姿月さんの姿が忘れられなくて。ダメもとでオファーしました。1回目から大きな挑戦です」。その姿月は今年、宝塚で初舞台を踏んでから30周年。様々なコンサートやイベントを自らプロデュースし、開催している。「その一環としても、こういう形のイベントが出来るのはうれしいですね。これまで、お三味線の方とのコラボはありますけれど、お能や狂言、歌舞伎の方たちといった古典芸能の方とは初めて。退団してから17年。誰と出会うか、どんな仕事と出会うかは運だと思うので、すごく楽しみです」。今回、姿月はソロで歌も歌い、裕一は能のダイジェスト版ともいえる舞囃子を舞う予定。さらにふたりのセッションやトークショーも企画されている。「日本人として、知らないことがいっぱいある」という姿月は、お能はまったくの初心者だ。「自分も含めて、これまでお能を知らなかった方に知っていただくきっかけになれば」。裕一は「“極める”という思いを持って進んでいる人は、全然違う分野でも一緒、きっと繋がる部分があると思います。今後も続けていきたいですね」。能楽堂から発信する、若き能楽師の挑戦を応援したい。

公演は、11月26日(日)大阪・大槻能楽堂にて開催。チケットは発売中。

取材・文:高橋晴代