舞台『3150万秒と、少し』 舞台『3150万秒と、少し』

英国人作家ラルフ・ブラウンの小説『NEW YEAR'S DAY』をベースに、劇団青年座文芸部の藤井清美が書き下ろして演出も担当、2005年より全国の中・高等学校などを巡演した『3150万秒と、少し』。“自分は何故、何のために生きているのか”という問いを真正面から描く本作は、この種の舞台では異例の反響を巻き起こし、今回改めての舞台化となった。突然の死を突きつけられ、それでも生きねばならない現実との狭間でもがく17歳を演じるのは、若手実力派の相葉裕樹と小澤亮太。2月14日、初日を控えたゲネプロを天王洲 銀河劇場で観た。

『3150万秒と、少し』チケット情報

高校2年生の春休み。担任を含むクラスの皆でスキーに来ていた高野悠也(相葉)と川原直人(小澤)は、雪崩で全員の命を失ってしまう。家族や先生からは「無事でよかった」と声をかけられるものの、ふたりには「なぜ僕らだけが生き残ったのか」という葛藤しかない。恋人だった葉子(美山加恋)の思い出にも苦しめられ死のうとする直人に、悠也は「一緒に“やりたいことリスト”をやろう。それを終えたら、一緒に“あの岬”に行って飛び込もう」と話す。資産家の息子で奔放な悠也と母子家庭で勉強に励む直人は、互いに反発し合いながらも、リストを乗り越えながら仲を深めてゆくが…。

「新聞の1面に載る」「放火する」「電車に乗ってどこまでも行く」など、悠也が意図を隠しつつ思いつめた表情で挙げる“やりたいことリスト”は、非現実的で、子どもじみた反社会的なものすらある。その真意が明らかになるまで、観る者は劇中の大人たちと同じく困惑と動揺を感じることになるのだが、藤井はその危うさを意識しながらギリギリのさじ加減で物語を展開させる。大胆なようで誰よりも繊細な悠也を表現した相葉、優等生の中に10代特有のもろい表情を垣間見せる小澤と、ふたりの好演も手伝い、最後まで飽きさせない。

17歳の少年たちが抱える“自分は何のために生きているのか”という苛立ちは、あるいは同じ10代の中高生ならよりリアルに感じることだろう。その姿は、対照的ともいえる大人たちによって一層浮き彫りになる。八十田勇一が演じる校長であり、斉藤レイが扮する直人の叔母でもある“かつて17歳だった大人”だが、こちらも俳優たちの巧さによって一面的になっていないのがいい。

初演から8年が経ち、今回は東日本大震災のことなど、藤井はいくつかの改稿を施したという。1年後、岬に集まった悠也と直人の行方は、観る者それぞれの胸に任されているようだ。

取材・文 佐藤さくら

小澤亮太&清水一希アフタートークショー決定!
小澤亮太が「海賊戦隊ゴーカイジャー」で共演以来、親交を深める清水一希。アフターイベントとしてふたりのトークショーが急遽決定した。
日時:2月23日(土)12:00開演の回終演後 客席内にて(この回のチケットを持っているお客様はどなたでもご覧いただけます)
登壇者:小澤亮太(MC 柳原聖)
スペシャルゲスト:清水一希

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