イ・ビョンホン 写真:鴇田 崇

王朝時代、暴君の替玉になった影武者が、王としての自覚に目覚める姿を描く『王になった男』で暴君と替玉を“一人二役”で演じ分けたイ・ビョンホンが、劇中で披露するコミカルな演技に自信があったことを告白するとともに、その完成度を上げる持論を展開した。

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李氏朝鮮時代、暗殺を危惧する暴君の光海君が瓜二つの道化師ハソンに影武者を命じるが、ハソンは王として政治の矢面に立っているうちに、民のことを真剣に想う真の王として覚醒していく過程を描く宮廷エンターテインメント。暴君と道化、イ・ビョンホンの見事な一人二役に韓国全土が熱狂したメガヒット作で、「実は、コミカルな演技には自信がありました(笑)」と自信満々に回想する。ただ、「久しぶりで程度が分からなくて、チュ・チャンミン監督とサジ加減を相談しました」と正直に経緯を言い、「幼稚にしたくないけれど、コミカルに撮りたいと、何度も相談しましたね」とディスカッションを重ねたそうだ。

特にハソンは道化師なので、光海君とは違って変わった行動を取ることもしばしば。その設定について自身でアイデアを出したこともあったそうで、その一例が「手を洗う水を飲み干してしまうシーンです(笑)」と裏話を明かす。ただ、そのワンシーンにもイ・ビョンホンならではの強いコワダリがある。「コメディー映画で、よく観ますよね。最初の設定では1回飲み、周囲の顔色をうかがって、そこで終わりでした。でも、めずらしくないので、アイデアを出しました(笑)」。実際には1回水を飲み、チョ内官(ハソンの世話係)の顔色をうかがい、すべて飲み干すというシーンに。

実話をベースにした歴史絵巻である一方で、大胆なフィクションとイ・ビョンホンの熱演でスリリングな宮廷エンターテインメントに仕上がった本作。韓国のアカデミー賞“大鐘賞”で史上最多主要15部門を受賞、記録的な興行収入を記録した理由には、「実写におけるリアルな説得力です」と名優は言う。「コミカルな演技は洗練されていないと誰も映画の中にのめり込めず、笑ってくれないと思っています。その種の表現はコメディーにおいて幼稚で表面的になりがちですが、『王になった男』は上手くいったようで安心しています(笑)」。

『王になった男』
2月16日(土)より、新宿バルト9、丸の内ルーブルほか全国ロードショー取材・文:鴇田 崇