クエンティン・タランティーノ監督

来日中のクエンティン・タランティーノ監督が15日(金)、都内で行われた会見に出席。アカデミー賞作品賞を含む5部門にノミネートされた『ジャンゴ 繋がれざる者』への思いを語った。

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奴隷の身から自由を勝ち獲り、賞金稼ぎとなったジャンゴ。彼がドイツ人歯科医のシュルツと組んで、行き別れた妻を取り戻すために奴隷農場の主に戦いを挑む姿を痛快に描き出す。

「アメリカの歴史の中でも原罪とも言える、いまなお贖い続けている罪を描いた」と奴隷制度をテーマとして描いた本作を語るタランティーノ。このテーマを西部劇と組み合わせながら描いたが「いつか西部劇を作りたいという思いはずっと持っていたんだ」と感慨深げに語った。

ジェイミー・フォックス演じるジャンゴとクリストフ・ヴァルツによるシュルツのコンビに、奴隷農場の主・キャンディ役を演じたレオナルド・ディカプリオ、彼に長年仕える奴隷頭のスティーブンに扮したサミュエル・L・ジャクソンなど、錚々たる顔ぶれが個性的なキャラクターを見事に演じているが、タランティーノは彼らへの称賛を惜しまない。特に本作で初の本格悪役に挑戦したディカプリオについて「脚本上ではキャンディはもっと年齢が上の設定だった」と明かし「脚本を読んだ彼から『会いたい』と連絡があり、そこでいろんなアイデアを聞いて『もっと若くした方が面白いかも』と思ったんだ」と説明する。イメージしたのはカリギュラやルイ14世といった「手に負えない王子」。その演技に対し「Magnificent(極上)! 彼は作品を背負える世界有数のスターだけど、同時に素晴らしいキャラクター俳優。役に埋没して彼自身が見えなくなるほどで、特にハンマーを手に取るシーンは空恐ろしさすら感じたよ」と賛辞を贈った。

また単に復讐劇でなく、ラブストーリーとして描かれているのも本作の大きな魅力。「ただの復讐のための西部劇にはしたくなかったんだ。ジャンゴを動かすもの、それは愛だ!」と語り、大好きな日本映画『仁義なき戦い』(深作欣二監督)仕込みの“仁義”がこの作品でも描かれていると明かす。「英語ではうまく訳しきれない言葉だけど、深作監督に聞いたら仁義とは『世界で最もしたくないことだけど、せずにはいられないこと』ということだった。やっとの思いで自由を手に入れた男が、逃げ出したはずの地獄に舞い戻る。愛する人が奴隷のままで生きていくことなどできないから。それこそがこの映画の仁義なんだ!」と身ぶり手ぶりを交えて熱弁をふるい、報道陣からは拍手がわき起こった。

昨年末に全米公開を迎え、13日で1億ドルを突破するなど興行的にもキャリア最高の成績を収めたが「リスクを取って作った作品がこれだけ受け入れてもらえたことは嬉しい。20年やって来たけど、いつだって自分の“アレ”を差し出すくらいのリスクを背負って映画を作ってるんだ!」と最後は下ネタまで挟み込んで熱い思いをまくし立てていた。

『ジャンゴ 繋がれざる者』
3月1日(金)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー