(左から)黒木華、オダギリジョー、松田龍平、宮崎あおい、石井裕也監督

映画『舟を編む』の完成披露試写会が2月19日に都内で開催され、主演の松田龍平をはじめ、宮崎あおい、オダギリジョー、黒木華、石井裕也監督が上映前の舞台あいさつに登壇した。

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昨年の本屋大賞1位に輝いた三浦しをん氏のベストセラーを映画化。15年もの歳月を費やして自社の編纂による辞書の完成を目指す人々の姿を描き出す。

コミュニケーション能力は著しく低いが、言葉への熱い思いを秘める主人公・馬締(まじめ)を演じた松田は本作について「普段、何気なく使っている“言葉”を違う角度で見られる映画」と語り、「いまは辞書さえもデジタルで、何でもスピーディに『1+1=2』みたいに答えが出る中で、辞書を引いて回り道する楽しさを知っていただければと思います」と呼びかける。同い年の石井監督とは撮影前から役などについてじっくりと話し合うことが多かったそうだが「意見が食い違ってぶつかるんですが、そうすると石井さんは保留にして家に持ち帰って、次の日にまた話し合うということがたびたびありました」と粘着質な演出について明かした。

宮崎は馬締が暮らす下宿の大家の孫娘で板前を志す香具矢を演じたが、板前を演じることで「背筋が伸びる気がしました」と振り返る。「包丁の練習でコンニャクを切ったり、器と食材の相性について学んだり、いままで以上に考えるきっかけになり、個人的に楽しかったです」と笑顔を見せた。そんな宮崎が、現場で最も真面目だと感じたというのが『おおかみこどもの雨と雪』でも声優として共演している黒木。宮崎は黒木について「個人的に一番好きな女優さん」と語り、「生活の話をしてても真面目で、でも毒がある(笑)。かわいいなと思ってました」とニッコリ。黒木は「ありがとうございます」とはにかみつつも「“毒”ってどういうことなんでしょうか…?」と困ったような笑みを浮かべていた。

また、馬締の先輩社員・西岡役でコミカルな姿を見せているオダギリは、司会者から“お調子者のムードメーカー”と役柄を紹介されると「この役、“チャラい”とか“お調子者”と紹介されることが多いんですが、すごく恥ずかしいですね(笑)。本人はそのつもりがあるかないのか分からないし、僕もよく分からないまま演じて終わってしまったんですが…」と飄々とした口調で語り、笑いを誘っていた。

膨大な量の書籍が積まれた編集部のセットや温かみを感じる35ミリフィルムによる撮影は、監督の細部に対する思いが散りばめられている本作だが、石井監督は「手作りで、アナログなやり方で、辞書を作っている人たちに寄り添うようにこの映画を作れたらと思っていました」と作品に込めた思いを口にした。

『舟を編む』
4月13日(土)丸の内ピカデリーほか全国公開